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謎の金属小惑星プシケはどうやってできたのか、新理論が発表される

9/21(土) 9:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

コアにある鉄とニッケルは、どのように小惑星の表面に染み出したのか

 火山は意外なところで、意外なものを生み出すようだ。このほど発表された理論では、太陽系が形成された当初に存在した「微惑星」と呼ばれる天体に、溶融した鉄とニッケルを噴き出す火山があったかもしれないというのだ。そして、こうした火山の噴火が、石鉄隕石(せきてついんせき)と呼ばれる、美しいが謎ばかりの隕石の形成過程を説明できる可能性ももつという。

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 注目の理論は、天文学の専門誌「Nature Astronomy」に2019年9月16日付けで発表された。この理論モデルは、直径約280kmの小惑星「プシケ」の奇妙な特徴も説明できると期待されている。NASAは2022年に小惑星探査機プシケ(英語読みでは「サイキ」)を打ち上げ、探査機は2026年に小惑星に到着して、詳細な地図を作成する予定になっている。つまり、順調にいけば10年以内に検証できる。

 NASAのプシケ・ミッションの主任科学者である米アリゾナ州立大学の惑星科学者リンディー・エルキンズ=タントン氏は、「この研究が発表されて本当に良かったです。彼らが計算してくれなかったら、私たちが自分でやらなければならなかったですからね」と話す。

 論文の筆頭著者である米パデュー大学の惑星科学者ブランドン・ジョンソン氏は、「プシケ・ミッションには大いに期待しています。小惑星プシケを、夜空の光の点としてではなく、実在する物理的な天体として考えるのは楽しいことです」と言う。「プシケ・ミッションが何を発見するにしても、非常に興味深いものになるのは確実です」

金属光沢の正体

 プシケの表面をレーダーで測定した結果は、この小惑星が金属のような滑らかな光沢(金属光沢)があることを強く示唆している。科学者たちは、その光沢が、微惑星(誕生したばかりの太陽系内で多数形成された小さな天体)の中心部のコアが露出したものではないかと考えている。これまでの仮説では、誕生当初のプシケは鉄とニッケルからなるコアと岩石からなるマントルをもっていたが、初期の無秩序な太陽系の中でほかの微惑星と衝突を繰り返すうちにマントルを剥がされてしまったとされていた。

 しかし、2017年以降、プシケの体積に関する2つの研究から、この小惑星の密度が約4.2g/cm3で、中心まで鉄とニッケルの塊だった場合に予想される密度より約45%も低いことが明らかになっている。プシケが金属だけでできているなら、穴だらけでスカスカということになる。もう1つの可能性は、表面は金属からなるように見えても、岩石からなるマントルが残っているということだ。ただ、だとすれば、表面がコアに似るのはなぜなのかという疑問が残る。

 エルキンズ=タントン氏は、「岩石のみからなるにしては密度が高すぎ、金属のみからなるにしては密度が低すぎるのです」と言う。「いったい何なのでしょう?」

 発表された今回のモデルによれば、その正体は次のようなものになる。プシケの密度の説明は、今から数十億年前、小惑星が形成されてから最初の1000万~1億年間にどのように冷却されたかによる、というのだ。鉄、ニッケル、硫黄の混合物からなるプシケのコアがまだ高温の液体だった頃、液体は外から徐々に冷えてゆき、中に向かって凝固していった。その際、コアの鉄とニッケルが結晶化して、冬に窓ガラスの表面に広がる霜の結晶のように、プシケの内部に広がっていったと考えられる。

 しかし、鉄とニッケルは、硫黄があると結晶化しない。このため、コアの金属が凝固してゆく際に、硫黄は溶けた金属のたまり場になった部分に集中していくことになる。硫黄が蓄積した部分は温度が下がっても液体のまま残る。純粋な鉄は1538℃で凝固するが、鉄と硫黄の混合物は、その割合によっては987℃でも液体のまま残る。

 ジョンソン氏らは、溶融金属のたまり場の大きさによっては、数気圧~数十気圧の大きな圧力がかかると計算した。マントルの厚さが50km未満なら、歯磨き粉のチューブを押して中身を出すように、この圧力がコアにある溶融金属を押し出し、溶融金属はマントルを貫いて天体の表面に露出するだろう。火山の噴出物が上がってくる火道のようなものだ。

 研究チームはこの理論的過程を「フェロボルカニズム(ferrovolcanism、鉄火山活動)」と命名し、プシケの奇妙な外見と密度の説明に役立つと考えている。ジョンソン氏と、同僚のマイケル・ソリ氏、アレクサンダー・エバンズ氏は、岩石からなるマントルの厚さが25kmであれば、観測されたプシケの密度は自分たちの理論で説明できることに気づいた。プシケが岩石からなるマントルをもっているなら、小惑星の表面はコアから上昇してきた金属で覆われているのかもしれない。

「特に興味深いのは、プシケが鉄とニッケルの塊ではない、つまり、むき出しのコアではない可能性があることです」とジョンソン氏は言う。「私たちの理論が正しければ、プシケには厚さ数十kmのマントルがあるはずです」

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