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「審判に勇気を与える」一方で…取材を通して感じた効果と懸念

9/21(土) 12:53配信

footballista

ジャーナリストの視点

ルヴァンカップのベスト8がプロレベルでのお披露目となった日本でのVARだが、そこに向けたテストとして、ユース年代の大会で先行導入されていた。SBSカップなどの取材を通してピッチの外からVARを“体験”した川端暁彦さんに、監督の見解や現場の雰囲気を踏まえた私見を語ってもらった。

文 川端暁彦

U-18ベルギー代表監督の見解

 「いや、でもPKはPKだからね。正しい判定が行われたということだから、文句をつける気はないよ。VARに関して、私は100%賛成なんだ」

 U-18ベルギー代表を率いるジャッキー・マタイセン監督はそう言って、にっこり笑った。日本の静岡県で行われたSBSカップ国際ユース大会において、ベルギーはコロンビアと対戦。ベルギーが実に3度のPKを献上して敗れた後のことである。

 VARの効用の一つとして挙げられるものとして、「審判に勇気を与える」という一面がある。たとえどれほど経験を積んだ審判であっても、「自分がミスをするかもしれない」という恐怖感と戦っているものだ。選手から激しい抗議を受けた時、毅然とした対応を求められるものだが、そこは人間である。「本当に合ってたのか?」という不安と常に戦わないといけない。

 この点、VARという「神の目を持った助言者」から常に監視してもらえる試合において、不安感が薄くなるのは想像することが容易だろう。「もし間違っていたら正してもらえる」安心感から、自信を持って判定を下しやすい。このため、これまでは勝敗を動かす可能性が高く、笛を吹くのに勇気が必要な判定を審判が下しやすくなるのではないかという分析が存在する。

 筆頭に挙げられるのはPKの判定であり、主審が見逃したPKをVARが拾い上げたケースを含め、VARのある試合では「PKの判定が増えていくのでは?」という予想もある。4度のPKが生まれた背景にそういうこともあるのではと思い、ベルギーのマタイセン監督にVARについて問いかけた結果、返ってきたのが冒頭の言葉だった。

 あくまで人間が主観的なジャッジを下すことにフットボールの醍醐味があるのだという見方は確かにあったが、試合結果によって動く金額があまりに莫大になっていく流れの中で、審判にかかるプレッシャーが大きくなり過ぎてしまった。日本のJリーグにおける審判の「叩かれぶり」を観ていても、彼らにはサポートが必要なのは確かだろう。何せスタジアムにいる審判員以外の全員がスマホでスロー再生をチェックできる時代なのである。孤独になりがちな審判員のポジションがより孤独になってきた現状がある以上、やはり映像判定を導入する流れは避けられないし、VARは基本的に審判員の味方なのだ。

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最終更新:9/21(土) 22:25
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