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【ヒットの法則05】先進メカとデザインでアウディ人気を一気に押し上げたA3スポーツバック

9/21(土) 12:02配信

Webモーターマガジン

ハッチバックとアバントの中間パッケージング

2004年9月、第2世代のアウディA3で登場したA3スポーツバックは今に続く人気モデルとなっている。1996年に3ドアでデビューした初代アウディA3は後に5ドアを追加しているが、第2世代で、単なる5ドアモデルではなく「スポーツバック」という独立したモデルになったことで一気に人気を集めることになった。アバントよりもさらにスポーティな位置づけとした絶妙なネーミングも大きかったようだ。デザイン的にもメカニズム的にも先進感がいっぱい、当時それはどのように受け入れられたのか、振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年1月号より)

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2004年9月24日に発表、10月22日からデリバリーが開始されたアウディA3スポーツバック。これまでボディバリエーションのひとつに過ぎなかった5ドアモデルに独自のパッケージングと名称を与えた上、アウディの新しい顔と言うべきシングルフレームグリルを採用するなど、何かとニュースが多い新型車ではある。

ただし、メカニカルな部分で最も大きな話題となる2LのターボFSIエンジンは2005年2月からのデリバリーということで、今回は受注が開始されたに過ぎない。何を隠そうこのパワーユニットはパリサロンでデビューしたてのゴルフGTIと同じもの。供給もやっと立ち上がったところで、3ドアで既存の自然吸気FSIや3.2クワトロより上陸が遅れるのも致し方ないという状況なのだろう。

しかしアウディ・ジャパンは粋な計らいを見せてくれた。何と出来たてほやほやの2.0TFSI数台を空輸し、いち早く国内で試乗できる機会を作ってくれたのだ。しかもドライブコースに組み込まれたMINEサーキットでは、ターボFSIエンジンを積んでル・マンで総合優勝を飾ったチーム郷のR8のデモンストレーションランという嬉しいオマケまでつけてである。

プレミアムブランドを標榜し日本でも大躍進中のアウディ。その販売比率を紐解いてみると、全体の52%をDセグメントのA4が占め、続く15%をA3とTTが分け合っているという。さらなるシェアアップを達成するためには量販が見込めるCセグメントのボリュームアップが必須。ユーティリティを高めて登場したスポーツバックはその鍵を握る存在であり、プロモーションにこれだけの手間を掛ける理由もよくわかる。

というところで、まずはスポーツバックと3ドアのパッケージ上の違いからチェックしよう。スポーツバックのスリーサイズは、全長4285ラ全幅1765ラ全高1430mm。3ドアに対し全長が70mm延長されたのが唯一の違いで、ホイールベースにも変化はない。つまりリアのオーバーハングを伸ばして、積載性を向上させたのがアピールポイントだ。たったそれだけの違い?と、正直なところ思ったりもするのだが、先代までドア数にかかわらずまったく同じディメンジョンで勝負してきたアウディにとって、やはりこれは画期的なことなのだ。

もともとコンパクトな成り立ちのA3は、実用面では確かに厳しい部分があった。リアシートは乗り込んでしまえばそこそこの広さは確保されていたが、フロントシートを倒してのアクセス性はやはり良好とは言えなかったし、ラゲッジルームもパーセルボード下は350Lと先代ゴルフより広いキャパシティを有していたものの、件の低く絞り込みの効いたスタイリングのせいで、ボードを外して荷物を積み上げるような使い方は不得手だった。

プレミアムカーにそうした使い方が似合うかは意見の分かれるところだろうが、ファミリーカー的なニーズに応えられる実用性を3ドアのA3が有していたとは言い難い。そこでスポーツバックの投入である。

後席スペースは3ドアと大差ない。シート座面が低めにセットされており、床との段差はさほど大きくないが、普通に座っても膝が浮くようなことはないし、フロントシート下に爪先が入るのでそこそこリラックスした姿勢も取れる。ヘッドクリアランスも身長172cm座高標準!? の僕が座って拳1.5個くらい。全体に車高を抑えたクルマゆえ、多少の閉塞感はあるが十分実用に耐える空間だ。それに何と言ってもドアが2枚追加されたことで乗降性が飛躍的に良くなっているのが嬉しい。

ラゲッジルーム容量は20L増えた370L。数値にするとわずかだが、フロアの奥行きに余裕が増しているし、開口面にテールランプの張り出しが残らないゲートデザイン(リアコンビの一部がゲート側にマウントされた)になったため使い勝手は抜群に向上している。ただしこれはFFモデルに限る。3.2クワトロは床下にリアデフを吊る関係でフロアが一段高くなっており、FFほどの容積はない。それでも床面積は増えているので、3ドアよりもユーティリティ面では有利ではあるのだが。

アウディではスポーツバックをハッチバックとアバントの中間に位置する新しいパッケージングと定義している。確かに物は言いようだが、僕にはようやく普通に使える5ドアが出たという印象の方が強く、本質も実はそこにあると思う。ただ、使い古された5ドアハッチという呼び方がプレミアムなアウディのイメージにそぐわないのだろう。

相変わらず清潔で質感の高いインテリアを眺めていると、どうして5ドアひとつ作るのにそこまで慎重になるかなあ、とも思う。たとえばこのスポーツバック導入にあたってスポーティさを強く前面に押し出しているのも、このクルマを単に実用の小型車と捉えて欲しくない表れだ。
そんなに心配しなくてもアウディの軽快な走り味はすでに十分知れ渡っている。その上にユーティリティの向上を果たしたスポーツバックは今後A3のメインモデルになると言って差し支えないだろう。

それよりも心配なのは、スポーティイメージを固定するためにラインナップを走りの方向で絞ってしまうことだ。今回は3ドアにあるアトラクションは用意されていないが、向上したユーテリティを気軽に味わいたいと思うアウディのエントリーユーザーも少なくないはずだから、これもいずれは用意して欲しい。

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最終更新:9/21(土) 12:02
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