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伴侶に先立たれた妻…心のよりどころはどこに?

9/21(土) 7:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

高齢期を迎えた多数の女性が出会う人生の一大事は、伴侶との別れだといえます。書籍『胎児のときから歩む一生』では、私たち人間が生涯の段階として必ず通るところを「胎児期・乳幼児期・児童期・思春期・青年期・壮年期・高齢期・終末期」の八期に分け、人生とその時期に関わってくる大切な人々について考察します。本記事では、そのうちの「高齢期」を取上げます。

男性の死亡年齢が女性より早い理由

高齢期を迎えて、多数の女性たちが出会う人生の一大事は永年共に過ごした伴侶との別れである。寿命年齢の男女別のデータの発表によると、平均に5歳ほど男女の死亡年齢の差があるという。

なぜ男性の死亡年齢が5歳も早いのかとのことについて、色々と物議が取り沙汰されているのだが・・・。一に社会生活のストレスと言われる。女性より多くの人との交わりの日々から生じてくるからであると言われる。男女共同参画社会と言われても、圧倒的に男性が家族の生計を担って進んでいるのが現状の中で、職業病とも言われるストレスから逃れられないからである。

「男子家を出いずれば、7人の敵あり」と昔からの諺は正しく、敵とはストレスを指しているのであろう。その解消として仕事帰りに一杯のお酒ということでバランスをとったと思われるが、一杯が一杯で終らずハシゴ酒に及ぶことが、身体に負担を及ぼし、女性より5歳早い寿命率ではないか。このように、男性の平均寿命の短さによって、大方の女性たちは夫の病との関わり、夫の死との関わりに出会うことになる。

私の場合、夫が病に倒れた当初はさほど深刻とは受け止めず、いずれは近いうちに完治するものと軽く考えていた。「まさか、そんなはずがない」。永年の生活の中で常に一緒の人がそんなはずはないと強く不安を打ち消し、あちこちの病院を訪ねることになる。どこかで病名を名付けてもらうことができて、具体的な治療法が見付けられないかと、必死だった。それぞれの病院の答えはいつも同じ、「高齢のために起きている症状です」

しかし、状態は日を追うごとに悪く変化していく。それが認知症と判ったときの驚き。夢かと思った。「何で、そうなるの」。受け入れられなかった。毎日心が萎えていく。信じられない。この歳まで、人生の荒波を乗り越え、子どもたちを育て、それぞれの立場で努力を重ね生きてきた幾歳月の様子が走馬灯のように現われる。

日々に認知意識を失う姿を、感じる苦しみ、悲しさだった。確かめ合い、分かり合い、争いもその価値観の差ゆえに徹底的に追及し、納得し合った日々。もうその感性も記憶もない。その姿をなかなか認められなかった。4人の娘たちをとても愛して、関わっていた。その子のことも分からなくなっていく。認知症という病を恨んだ。「どうしてこんな病にかかったの」

そうして10年の患いの後、旅立った。唯一できたことは、娘たちと協力して最後まで在宅介護で見送ったことである。在宅医療の充実のおかげである。言葉では“最後まで在宅を”は聞こえのよい話だが、理想と現実世界の戦いであった。簡単に事は進まないことを改めて知った10年だったが、大勢の人に助けられて、通すことができた。10年の月日は、しかし日々心の定まらない、せつない時間であった。

夜になるのが不安でたまらない。娘たちがそれぞれに帰り、関わってくれる人も夜はいない。夜中になると徘徊が始まる。外に出られないようにドアには夜の鍵をいくつかかける。その鍵を開けようとする音に、眠りかけていた意識がぱっと目覚める。本人に気づかれないように、足音を立てないように、様子をうかがう。

時折は数箇所の鍵が開いてしまう時がある。外に出ようとする夫を抱きしめ、必死に引き止める、あっという間に振り切られ、後ろにひっくり返ってしまう。ドアを出たら、どうすることもできない。街に出たら、どうすることもできない。あの恐ろしい思いがよみがえる。どんなにがんばっても、とても無理と、途方に暮れるのだった。

日に日に体力と気力の衰えを感じた。そんな状況を主治医から、ヘルパーさんの導入を勧められて、やっと安心して眠れるようになった。しかし、眠っていながら、どんな物音にも反応した。

いつも同じ不安な思い。突然に容体が変わって、「もしや」と、しばらく気配をうかがう、やっと落ち着き、続きの眠りに入るのが、常であった。朝起きて夜寝るまで、意識の中に病床に伏す夫と二人連れの一喜一憂の生活を過ごした。

本来なら、幾山河を共に乗り越え、手を携えやっと辿り着いたこの期。責任と義務を終えた達成感を語り合い、喜び合うはずだったのに。限りなく無念の思いが込み上げる。「明日を論ずるなかれ」「明日のことは分からない」と言われる理由が、納得できた。このような思いを指していることを。

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最終更新:9/21(土) 7:00
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