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なぜ恐竜は絶滅した?答えは素粒子物理学に

9/21(土) 6:00配信

JBpress

 僕は、「創造主」という意味での「神様」のことは、信じていない(いや、別にどんな神様もことさらに信じてはいないが)。しかし、物理学に関する本をさまざまに読んでいると、ときどき「神様、なんでこんな風に世界を作ったん?」と問いただしたくなるような話にたくさん出会う。「現実は小説より奇なり」とはよく言う話だが、物理学を通じて世界の仕組みについて知れば知るほど、その思いはますます強くなっていく。

 物理学の世界には、「この世界は、人間という存在が生み出されるように細部が調整されている」というような主張をする「人間原理」という考え方もあるが(意見の分かれる考え方であり、現時点ではまだ多くの支持を得ているわけではないようである)、確かにそう言ってしまいたくなるぐらい、僕らが生きている世界はヘンテコなのである。

 今回は、そんな世界のヘンテコさ加減がわかる理系ノンフィクションを3冊紹介しようと思う。

■ ダークマターと恐竜絶滅になんの関係が? 

 「恐竜が隕石の衝突によって絶滅した」なんていう話は、今では常識とされていると思うが、『ダークマターと恐竜絶滅』(リサ・ランドール)を読んで意外だったのは、このことが学術的に確定したのは2010年だったということだ。確かに、学術的に物事を確定させるのには、様々な証拠や議論の積み重ねが必要だろうし、時間が掛かるのは分かるが、それにしてもつい最近であることに驚いた。1980年代にはむしろ、そうした考えは「異端」「頭がおかしい」と捉えられていたという。

 本書には、そもそも「宇宙から飛来した物体が地球にぶつかるという現象」そのものが受け入れられたのも割と最近だという記述もある。確かにカメラなどの記録装置がなく、精密な分析機器のない時代には、「空からデカイものが降ってきた!」と一般人の目撃者が言っても科学者は信じられなかったのだろう。隕石が宇宙から飛来するものだと正式に認められるようになったきっかけは、1794年に科学者たちの目の前でたくさんの石が落ちてきたことがきっかけだったらしい。

 さて本書は、そんな隕石と絶滅をテーマにした作品だが、著者のリサ・ランドールは素粒子物理学者である。そんな彼女がなぜ隕石や絶滅を扱うことになったのか。

 素粒子物理学の世界では、「ダークマター」と呼ばれる謎の物質について研究がなされている。これについて説明するのはなかなか難しいのでざっと書くと、とにかく「どんな観測機器を使っても現時点では見つけられないけど、でも存在しないわけがない物質」という感じだ。意味不明だろうが、まあとにかく素粒子物理学の世界では、この存在するはずの「ダークマター」が研究対象になっている。

 そしてこの「ダークマター」の研究を続けることで、著者は「ダークディスク」という、これまで観測されたことがない構造物が銀河系に存在する可能性があると気づき(これは、存在するならば今の技術で観測可能らしい)、そこから「DDDM理論」と呼ばれる理論を作り出した(これが何かは後述する)。

 さて、この時点ではまだ絶滅の話と結びついていないが、著者はあるディスカッションに参加した際に興味深い話を聞いた。それが、「地球上の生物の絶滅には一定の周期があるように観察される」というものだ。生物学の世界ではその周期はまったく説明不可能だったが、「DDDM理論」ならもしかしたら解決できるかもしれないという話になった。

 というのも、もし「ダークディスク」が存在するなら、周期的に「オールトの雲(これは、地球にやってくる隕石が生まれる場所だと考えられている)」が影響を受け、通常地球に飛来するはずではなかった隕石がやってくる可能性があるからだ。そして、その「オールトの雲」が影響を受ける周期が、生物の絶滅の周期と関連性があるのかを、現代の技術なら観測によって確かめられるのだという。

 恐竜の絶滅と素粒子物理学が意外なところで結びつく、非常にスリリングな一冊だ。

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最終更新:9/21(土) 6:00
JBpress

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