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「復興五輪」こそが復興を阻んでいる。元南相馬市町・桜井勝延氏、魂の叫び

9/21(土) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

被災地の実態を覆い隠す「復興五輪」

―― 東京都は五輪招致の口実に「復興五輪」を利用しただけだと思います。原発にしろ五輪にしろ、東京が福島を利用して金儲けをするという構図そのものは、震災前と震災後で何も変わっていないと言わざるをえません。

桜井氏:どれほど「復興五輪」の言葉が踊ろうとも、福島には原発事故の爪痕がまだまだ残っています。原発事故が起きなければ、現役世代や子育て世代はもっと戻ってきているはずです。しかし原発事故の影響で彼らは戻ってこられず、南相馬市は衰亡への道に向かっています。

 そのため、南相馬市では子や孫が避難して祖父母が残っている家族が少なくありません。原発事故が故郷を奪い、家族を引き裂いてバラバラにしているのです。だから、南相馬の老人たちは「子や孫と一緒に暮らすことができない」と嘆き、中でも仮設住宅に住んでいる方々は「仮設で孤独死したくない」と切実に悩んでいます。南相馬市では津波で630人が犠牲になりましたが、震災関連死では513人が亡くなりました。これは全国で最も多い数字です。

 また、南相馬市やいわき市では東電から賠償金をうけとった被災者が土地や家を購入したことで、バブル以上に地価が上がって固定資産税が上がっています。そこから、もともと住んでいた県民と新しく移り住んだ県民の間で軋轢が生まれることもあります。

 一次産業も立ち直っていない。農業や漁業、林業では放射線量を検査して一つ一つ信用を積み上げながら頑張っていますが、原発事故による風評被害に苦しんでいます。

 これで復興といえるのか。むしろ「復興五輪」という大義名分のもとで、被災地や原発事故の実態を覆い隠しているのが現状ではないか、そして「復興五輪」が終わった後には被災地や原発への関心が薄れるのではないか。これは犯罪的なことだと思います。

「何か悪いことをしたか」と安倍政権閣僚は言った

―― そもそも復旧復興とは何なのでしょうか。

桜井氏:いちばん大事なのは、「もう一度頑張ってみよう」という人の心です。土を盛って高台を作り、防潮堤を築き、復興住宅を建てても、人の心が立ち直らなければ復興は進みません。それでは「復興五輪」を機にそういう気持ちになる人が増えているか。残念ながら、そうはなっていないのです。

 最大の障害は、やはり原発です。原発事故が起きていなければ、被災地の姿は今とはまるで違ったはずです。これほど人々の生活を狂わせる原発はやめるべきです。脱原発は非現実的だという声も少なくありませんが、政治は一部の利権を守るのではなく、国民全体の幸福と安心、そして豊かな生活を守るべきものであるはずです。

 以前、私は安倍政権の閣僚に対して「あんたたちは本当にこの国を良くする気があるのか」と怒ったことがあります。その閣僚からは「俺たちが何か悪いことをやっているのか」と反発されて、非常にがっかりしました。

 いまの日本では国民が豊かに暮らすことができていないのです。被災地だけではなく、東京でも多くの人々が不安や貧困の中での生活を強いられている。一体、東京だけで一日何人が自殺しているのか。日本には素晴らしいところが沢山あるのに、こんな馬鹿げた国にしてしまって、もったいないにもほどがある。これは政治の責任です。

 いま福島が安心安全だと思っている県民はほとんどいません。それでも故郷に踏みとどまり、あるいは戻ってきた人たちが復旧復興に向けて必死に頑張っています。私たちは福島だけでなく東京をはじめとする全国でもそういう人たちを増やし、東北だけでなく日本全体を「復興」していかなければならないのだと思います。
(聞き手・構成 杉原悠人)

【月刊日本】
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最終更新:9/22(日) 15:21
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