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前田敦子が考える、女優の理想像とは。

9/22(日) 19:01配信

Pen Online

1991年、千葉県生まれ。アイドルグループ、AKB48の第1期メンバーとして活躍し、2012年に卒業。映画デビューは2007年の『あしたの私のつくり方』。おもな映画主演作として『Seventh Code』『もらとりあむタマ子』『旅のおわり世界のはじまり』などがある。

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理想像はなくて、求められる女優になりたい。

彼女自身は「出番の少ない役も入っていますから」とはにかむが、今年公開の作品だけでも実に5本を数える。前田敦子はいま、最も映画に愛されている女優だ。もしもつくり手が言葉ですべてを伝えられると思っているのであれば、映画という表現を選択する必要はない。そのことを理屈ではなく、肌で本質的に感じ取っている人なのだろう。「監督に対して、これはどういう意味ですか?と聞くことは意地悪のような気がしてしまう」という。

「説明できないことがあるのが当たり前だとずっと思っているので、質問して答えが見つかってしまうのはなにか違う気がして。監督が頭の中で見えているものがすべてで、それを自分のために言葉にしてもらう必要はないのかな、って思うんです」

得意なのは、空気を察すること。すなわちそれは彼女が誰よりも周りをよく見て、よく聞きながら現場に身を置いていることの証しに他ならない。

「スタッフさんが遠くにいても、もうすぐ呼ばれるなってわかるんですよ。普段そんなことはないのに、映画の現場では人の声がよく聞こえます」

たとえば『旅のおわり世界のはじまり』などで組んでいる黒沢清監督は、前田をどんな時も物怖じしない女優だと評している。けれども「カメラの前に立つまでにはさまざまな葛藤がある」という彼女は、ひとりきりで役についてじっくりと考え、成熟させていく時間をとても大切にしている。

「自分がこうなりたいという理想像はなくて、求められる女優になりたいという思いが強いんです。だから新しい台本をもらった時は、なぜ私がこの作品に呼んでもらえたのかをまず考える。その時間が、いま自分のいる場所がどこなのかを客観的に見つめる時間にもなっていますね。作品や役についてディスカッションするよりもひとりで考えるタイプですが、いちばん大事なのはカメラが回った時に相手とどうキャッチボールできるかということ。お芝居という嘘ではあっても、人と人が対話しているのだから、自分だけがガチガチに固めないようにしています」

セリフは声に出さず、ノートに書き出して覚えるのがいつものスタイル。初舞台を踏んだ時に蜷川幸雄から伝えられた、「音楽からこの世界に入った人は歌うようにセリフを覚えがちで、相手がどう出てきても自分のリズムで話してしまうから気を付けたほうがいい」という教えを守ってきた。

最新作『葬式の名人』で演じた主役は、工場で働きながら息子を育てているシングルマザーの雪子。同級生の死をきっかけにクラスメートが集う、一夜の物語が描かれる。

「母親役は年齢的にも無理がないと思いましたし、最初に脚本を読んだ時から、いろいろな経験をしていろいろな感情をもっている雪子の人生が腑に落ちました。ファンタジーのように不思議な世界だけど現実味がある話なんですよね。登場人物の関係性がうらやましくなるような、大人の青春映画です」

この映画の撮影の後、彼女は母になった。現在は仕事とプライベートのバランスを摸索している途中だという。

「結婚して子どもを生んでうまくスイッチが切りかえられるようになって、仕事に対するありがたみをもっと感じるようになりました。映画の現場は、自分がいちばん居やすい場所。奇跡のような出会いがあるから、一生やめられない仕事だと思います」

写真:野村佐紀子 文:細谷美香 スタイリング:stylist Ayaka.k ヘア&メイク:天野優紀

最終更新:9/22(日) 19:01
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