ここから本文です

「駅徒歩15分超」で女将がワンオペする酒場が「いつも繁盛」のワケ

9/22(日) 13:01配信

現代ビジネス

「2時間かけて」ファンが通う店

 すべての酒場好きにすすめたい店、だと思う。旨くて安くて、心地いい。女将さんがいい。

丸亀製麺のピンチを救った、超高額「肉盛りうどん」の奇跡

 だが、遠い。どこの駅から行っても15分はかかる。それでも、千葉県から2時間以上かけてやって来ていた客もいるし、なかには、この店に通うために近くに引っ越した人もいるらしい。そのくらい良い店である。

 京浜工業地帯の大動脈には何筋かあって、そのうちの一つが「国道131号線」である。羽田空港の西の入口を起点に、環八通りを西に1kmほど進み、大鳥居交差点を右に折れて通称「産業道路」を北北西に進んで、大森警察署交差点で国道15号線(第一京浜)にぶつかるまでのわずか3.6kmの道。

 かつて町工場がひしめきあっていたこの産業道路沿いに、その店はある。

 名を「豚八」という。大田区南大森1丁目。JRなら大森や蒲田、京浜急行なら梅屋敷、京急蒲田、糀谷あたりが近い駅だが、しかし、どこも「最寄駅」という感じがしない。いずれの駅からも歩いていけば、ゆうに15分以上かかる。紛うかたなきロビンソン酒場である。

 孤島でサバイブした男、ロビンソンクルーソーにちなんで、どこから行っても遠い、されど長く愛されつづけている酒場を私はロビンソン酒場と呼んでいる。ちなみに「豚八」は昭和42年創業。以来、半世紀以上、いつも店は賑わっている。

常連客も、一見客も、受け入れる空気

 その夜も、口開けからそう時間が経っていないタイミングで暖簾をくぐった。常連の方が一人でキープしたボトルを飲んでいた。

 「昔は予約でいっぱいだったけれど、いまは閑古鳥ですよ」

 女将さんの昭子さんが言ったが、これは謙遜もいいところ。それから一時間もたたずに店は満席になった。カウンターと小上がり。無理やりつめれば30人入れるだろうか。小体な店だが、切り盛りは昭子さんが、ほぼ、一人でやっている。

 愛される理由は数多ある。まず肴がいい。お通しから、つきささる。

 「ポテトサラダとちくわですね」

 もちろん昭子さんのお手製。じゃがいもは、食感がシャキシャキからホクホクにちょうど変わるくらいの絶妙な茹で加減である。塩加減は軽めで、あくまでポテトサラダとして旨いことを目指した品だ。時折居酒屋で供される塩がきつくて「酒を無理に進ませる」感じが一切ない。

 店のオネストさ、すなわち店主の律儀さは、こういうところに現れるのである。

1/5ページ

最終更新:9/22(日) 13:01
現代ビジネス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事