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BitStar渡邉拓と七瀬大空が語る“バーチャルタレントの可能性”と研究拠点の大切さ

9/23(月) 15:17配信

リアルサウンド

 プロダクション「E-DGE」をはじめとした、インフルエンサーマーケティングのトータルソリューションを展開する株式会社BitStarが、東京都・秋葉原エリアにVR・バーチャルYouTuber(VTuber)研究を行う「BitStar Akihabara Lab」を開設した。

【写真】“握手”を交わす、BitStar渡邉拓&七瀬大空

 「バーチャルYouTuberに関する研究開発」や「VTuber専用のコンテンツ制作にあたる収録スタジオ」機能を備え、場所の貸し出しも行なっているという同ラボ。今回は同社の代表取締役である渡邉拓氏と、同社と株式会社テレビ東京コミュニケーションズが共同プロデュースするバーチャルシンガー・七瀬大空にインタビューを行い、スタジオ開設の経緯や、バーチャルタレントの可能性などについて、じっくり語り合ってもらった。(編集部)

「“なりたい自分”になって配信できる世界はシンプルに素晴らしい」(渡邉)

ーーまずは、インフルエンサープロダクション「E-DGE」を運営するなど、これまでYouTuber事業に力を入れてきたBitStarが、バーチャルYouTuberを積極的に取り扱うようになった理由について聞かせてください。

渡邉拓(以下、渡邉):大前提として、元々バーチャルYouTuberにはすごく可能性を感じていたんです。インフルエンサーのなかには、諸般の理由で顔出しができなくて、それがネックになって、活動が制限されたまま引退する方もいるわけですから、いろんな人がアバター越しに“なりたい自分”になって配信できる世界って、シンプルに素晴らしいじゃないですか。元々インフルエンサーを軸として会社をスタートしているので、それがリアルかバーチャルかの違いでしかなくて、いずれも個人の自己実現を広げる手段のひとつだと思っています。

ーーそういった背景があって、BitStar Akihabara Lab.を開設したんですか。

渡邉:理由は他にもあって、バーチャルYouTuberのコンテンツ作りは、環境によって制限があったり、逆に可能性が広がることもあると思っています。例えば環境によっては、コラボ配信をするにしても人数制限があるから全員は出演できない、みたいなことも起きてしまう。その点、今回設立したラボでは多人数の同時配信ができますし、技術開発部門を持っているので、バーチャルタレントなのにチェキ撮影ができるようになったり、富士山の登山やドライブも一緒にできたりと、大きく可能性が広がっています。

ーー今回のラボ設立・技術開発を経て、実現させたいこととは?

渡邉:他のエンタメコンテンツやYouTubeに関しては、“コンテンツのリッチ化”が避けられないところまで来ていると思います。現在、YouTuberにはそういった“質”が求められる時代になったからこそ、近いうちにVTuberにもその流れは来ると確信し、ラボ兼スタジオを立ち上げました。

ーーバーチャルの業界に後発として参入するなかで、どのように差別化を図ろうとしているのでしょうか。

渡邉:技術やコンテンツへの投資についてはまだまだ深掘りできていないのが現状なので、まずはそこを見極めることから始めるつもりです。とはいえ、バーチャルYouTuber専用のスタジオ自体がまだそこまでないので、作った時点である程度の差別化はできているように思います。今後は企業さんでバーチャルYouTuberを作る際のお手伝いや、イベント開催時にこのラボから配信することもできるますし、実際に立ち上げを発表した際、20~30社の企業さんからお問い合わせや見学の申し込みがあったので、そのニーズに応えていけば、自ずと差別化はできていくと思います。

ーースタジオを作る際に「この機能、この設備を軸にしよう」と思ったのは?

渡邉:「多人数でのコラボが配信できること」はすごく重要視しました。マーケットを大きくしていくという観点から見た時、それぞれが一人ひとり配信していくより、YouTuberのように大型のコラボをたくさん実施しながら配信していくほうがキャラクターが成長しやすいと思いました。同じように、バーチャルの世界でも多人数で配信できる環境は必要だと思い、MVN(慣性式モーションキャプチャ)を使って同時に7人まで配信できるように工夫しました。

ーーバーチャルYouTuberの事業を手がけるうえで、リアルなYouTuberの理論を持ち込めることもあれば、バーチャルにしかない特殊な部分もあると思います。これらの明確な違いを挙げるとすれば?

渡邉:YouTuberの方がバーチャルYouTuberよりもライトにマスに展開するコンテンツを提供できているのかなと思っています。だからこそ、収益構造も企業さんからのタイアップや広告収益が中心になっています。一方で、バーチャルYouTuberの場合は視聴者層もアニメ好きの方が多く、深く掘り下げる傾向があると思いますし、収益構造も投げ銭やグッズ物販、イベントなど、さまざまな形で収益を得ることができています。再生のボリュームはそんなに大きくないですが、一人当たりの熱量がめちゃくちゃ高いので、ここまでの盛り上がりを生むことができたのかもしれません。また、YouTuberの人たちは、基本的にサポートする・しないに関わらず、自立自走していることが前提という考え方があります。しかし、バーチャルYouTuberの場合はマネジメントや管理など、かなり手厚くやらなければいけない部分が大きいかもしれません。

ーーその違いは大きいですね。

渡邉:あと、感覚としてはライトなアニメに近かったりするのかなと思っています。バーチャルYouTuberの人たちって、アニメのキャラクターに近い感覚なのに、インタラクティブで身近な存在でもあるという、今までにない感覚をもたらしてくれます。今後はもしかすると、キャラクター・アニメビジネス自体の構造を変えていく存在になるのかもしれません。

「大変なのは『コミュニケーション』」(七瀬)

ーーここからは七瀬大空さんにもお話に加わっていただきたいと思います。七瀬さんから渡邊さんに聞きたいことはありますか?

七瀬大空(以下、七瀬):Akihabara LabのVTuberには将来どのような活躍をして欲しいですか?

渡邉:YouTuberの方が国民的スターを目標にしているように、VTuberの方にも国民的キャラクターになることを目指してほしいです。特にバーチャルYouTuberはプラットフォーム関係なく、キャラクターとしての価値やIPとして大きな存在になっていく可能性が非常に高いと思っているので、プラットフォームとか国境に関係なく活躍して、広く愛されるような存在になってくれたら嬉しいです。あと、コンテンツを作るうえで「得意なこと」「やりたいこと」「マーケットに求められること」の3軸があるんですけど、そこのベクトルは意識しつつ、個人の自己実現に役立ててもらって、みんながwin-winになる形を目指していければと思います。

七瀬:ありがとうございます。VTuberだけでなくYouTuberでも、歌を中心に活動している人が増えていますが、その中で“歌手を目指すインフルエンサー”をどういうふうに支えたいと考えていますか?

渡邉:プラットフォームと国境を越えるっていう観点でいくと、音楽自体がそういうことを可能にするコンテンツだと思っているので。単一のプラットフォームや国で考えるのではなく、マルチプラットフォームで、グローバルも含めてコンテンツ展開できるようにサポートできればと考えています。

ーー先ほどVTuberファンはアニメ好きの方が多い、というお話があったことを踏まえると、音楽面ではアニソン的な方向性に振っていくのか、グローバルなものを意識して発信していくのか、どちらなのでしょう。

渡邉:両軸を試しながら活動していこうと思っています。音楽活動って、地下アイドルさんたちもそうですけど、足元は結構地道にやらないといけないところがあるかなと思っています。小さく育てて積み上げていくなかで、大きくしていかなければいけないかなと。だからこそ、地道に支援できるように頑張ります。

七瀬:ちなみに、VTuberの案件を実施した企業さんからは、どういう反応をいただいているんでしょうか?

渡邉:VTuberさんだと熱狂的な視聴者の方が多いので、ライブや即効性のあるPRに関してはものすごく賑わっていて、爆発力もあると感じています。そういった反応を見て、いい評判をいただけることは多いですよ。特に僕らの中で一番手応えがあったのは、ゲーム内にキャラクターを登場させる施策ですね。ときのそらさんとスマホアプリゲームの『グリモア(グリモア~私立グリモワール魔法学園~)』のコラボは、かなり多くの方がアプリをインストールする段階までつながりました。生配信でプレイする際も、一気に人が殺到する印象です。

七瀬:VTuberとしての活動を案件に繋げるために、どのようなところに気をつければいいでしょうか?

渡邉:先ほどお話した「やりたいこと」「得意なこと」「求められること」のなかだと、個人的にはまず「世の中に求められること」にフォーカスした方がいいかなと思っています。YouTuberでもよくあるんですが、自分自身は好きでも、あまり視聴者の方から求められていないコンテンツは、再生数が伸びない傾向にあって。求められていることを積み重ねていって、大きくなっていって、その結果として本人にファンが付いて「何をやってもそのコンテンツが伸びる」状態になったうえで、「やりたいこと」をやるべきなのかなと。あとは現実問題でいくと、視聴数が平均して1万を超えてくるようになると、PRやタイアップなどの依頼も増えてくるので、当面は急がず、地道に視聴者さんに喜んでもらえるコンテンツ作りに注力していくことが大事です。僕からも七瀬さんに質問したいのですが、やりがいを感じる瞬間を教えてください。

七瀬:「自分の関わった動画や配信が世に出て、評価を目の当たりにした時」ですね。世の中に送り出した時点で、自分の中で相応のやりがいは感じているのですが、視聴者の皆様に良い評価を頂けたときの気持ちには勝りません。

渡邉:では、大変だと思うことは?

七瀬:「コミュニケーション」ですね。収録に際しては、事前にスケジュールや内容の報連相、現場レベルでの意見の出し合いなど様々な形でコミュニケーションが必要ですし、他のVTuberの方とお仕事させて頂く際には、より深いコミュニケーションが必要な場面もあるので、そういったものに苦手意識のある自分としては日常的に挑戦の連続であり、大変だなぁと思うことはあります。

ーー今後、Akihabara Labを使った展開に関して、実現していきたい具体的なチェックポイントはあるのでしょうか。

渡邉:まずは10万以上のチャンネル登録者数を持つバーチャルYouTuberを生み出したいですし、もう少し先の視点ですと、VRコンテンツやアニメなど、配信以外の世界へ進出できるIPとなるキャラクターになってもらえればと思います。状況によっては、他社さんと協業して成功例を作っていければと。

ーー市場規模については、どのように見ていますか。

渡邉:投げ銭の量は全体で見ると増えていると思いますし、物販、イベントに関しても増加してる傾向はあると思います。個人的にはキャラクターを通じて配信する人が増えれば増えるほど、視聴者も増えると思っているので、どんどん今後もマーケットとしては伸びていくんじゃないのかなと考えています。実際、抵抗感がなくなってきているからか、配信者はどんどん増えていますし、ジャニーズさんがSHOWROOMでバーチャルタレントを展開するなど、これまでにはない裾野の広がり方をしている状況です。冒頭にお話ししたコンテンツのリッチ化が進めて、もっと多くの人を巻き込める文化にしていければと思います。

中村拓海

最終更新:9/23(月) 15:17
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