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池松壮亮と蒼井優が、むき出しの心と身体でぶつかり合う。『宮本から君へ』は、令和にこそ見るべき一本!

9/26(木) 18:03配信

Pen Online

『宮本から君へ』の主人公、宮本は文具メーカーに勤務する営業マン。どこまでもまっすぐで不器用すぎる彼がいくつもの出会いや失敗を経験しながら、サラリーマンとして成長していく……なんて生易しい物語ではないことは、スタッフとキャストを見れば一目瞭然。『ザ・ワールド・イズ・マイン』『愛しのアイリーン』などタブーとも思える題材を描いてきた漫画家・新井英樹と、『ディストラクション・ベイビーズ』で暴力と向き合った真利子哲也監督、そして池松壮亮と蒼井優という芝居魂のかたまりのようなキャストが顔を揃えているのですから! ドラマ版が昨年放送され話題となり、ついに映画が公開に。この映画では原作の後半部分がものすごい熱量で描かれています。

『宮本から君へ』公開情報を見る。

池松演じる宮本が恋に落ちたのは、蒼井が演じる年上の女性、靖子。ヒモ気質で身勝手な元恋人の裕二に対して「この女は俺が守る!」と宮本が宣言したことで、ふたりは幸せな時間を過ごし始めます。しかしある日、営業先で自分を気に入ってくれた部長との飲み会に現われたのは、部長の息子で巨漢のラガーマン。酔っぱらった宮本と飲み会ではしゃぐ靖子に、とてつもない人生の試練が訪れます。

悲劇に見舞われた宮本が愛する人を守り抜くために選んだ方法は、復讐の計画を練ることでも理屈で敵をねじ伏せることでも、もちろん逃げる事でもない。考えなしに走り出してはあっちこっちにぶつかって、全力疾走ののち、殴り殴られ満身創痍。そんな宮本に靖子はのどが張り裂けそうになるほど、荒々しく声をあげ続けるのです。セックスシーンもケンカのシーンも、ふたりの体当たりな演技の説得力がすさまじい。

令和の時代にあって、ちょいちょい若者から聞こえてくる「恋愛ってコスパが悪いですよね」という冷笑的な世界とはまったく異なる、暑苦しいのに目をそらせなくなるような痛みが、この映画には確かに息づいています。おためごかしとか体裁を整えるとか、世間体を気にする……といったワードとは無関係のふたり。心と身体をむき出しにしてぶつかりあう様を見ていると、人間って動物なのだなと感動が生まれてきました。めちゃくちゃ疲れる人生だろうからうらやましくないけれど、でもやっぱりどこかうらやましい。無性に走り出したくなるような衝動を感じさせてくれる、究極の愛の物語です。

文:細谷美香

最終更新:9/26(木) 18:03
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