ここから本文です

薬と「一生のおつきあい」をしてはならない|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座

9/27(金) 6:06配信

サライ.jp

私は子どもの頃から頭痛、肩こりがひどく、薬が手放せませんでした。薬は善きもの、痛みは悪しきものでした。そんな私が「薬を使わない薬剤師」と名乗り始めて10年以上になります。厚生労働省が出したスローガン「1に運動、2に食事。最後に薬」を素直に受け取り、ウォーキングを始め、食事に気を遣い、「最後に薬」を飲むようにしてから、薬の量はグングン減り、薬を飲まなくても健康になれること、むしろ飲まないことで健康になれること、薬は病気を治すものではないことを、身を以て知ったのです。

「一生のおつきあいですよ」と渡していた降圧剤

「血圧、高めですね。お薬出しておきましょう」と言われ、処方箋を持って薬局へ。薬剤師が薬を「忘れずに飲みましょう」と注意事項を説明しながら手渡してくれます。そしてひとこと。「一生のおつきあいですよ」。

私も薬局にいた頃はそんなふうに言いながら患者さんにお薬を渡していました。「忘れないようにカレンダーに印を付けてくださいね」と。

しかし、心のどこかで割り切れぬものを感じていました。一生のおつきあい……ということは、その薬は数値を下げるものではあるけれど、病気を治すものではないということに気づいたからです。

降圧剤を飲んでいる間は、血圧は下がるでしょう。しかし、飲むのを止めればまた上がります。だから「一生のおつきあい」と言われるのです。

「メタボ健診」で一気に増えた患者さん

かつて、脳卒中や心臓病、糖尿病などは加齢とともに発症する率が高いことから「成人病」と呼ばれていました。それが食生活や運動習慣、喫煙、飲酒など個人の生活習慣と密接に関わり合いがあることから「生活習慣病」と呼ぶことになりました。2000年のことです。そして2008年から40~74歳まで公的医療保険の加入者を対象にした「特定検診・特定保健指導」いわゆる「メタボ健診」が始まりました。

メタボ健診は生活習慣病の予備群を発見し、発病を予防することを目的に設定されたものです。深刻な状態になる前に、食生活や運動習慣を変えることで病気を予防しようというものです。この考え方には私も賛成でした。

ところが、フタを開けてみると、薬を飲む人が一気に増えました。

「メタボ」と診断される基準について、たとえば男性で腹囲(へそ周り)が男性85センチ以上で、

(1)中性脂肪値が150mg/dl以上、または低HDLコレステロール値が40mg/dl未満→脂質異常
(2)最高圧が130mmHg以上、または最低血圧が85mmHg以上→高血圧
(3)空腹時血糖値110mg/dl以上→高血糖
(1)~(3)のうち1つ当てはまれば「メタボ予備群」。2つ当てはまれば「メタボ」という病気として診断されます。問題は(1)~(3)の基準値の設定にありました。
(メタボ診断の詳細については特定健診のHPをご確認ください)

血圧や血糖値のちょうどいい値は性別、年齢によって違うし、個人差が大きいにもかかわらず、とにかく一律です。また血圧の基準値は10年前と比べて大きく引き下げられました。

人間40代、50代にもなれば、腹囲85センチ以上の男性はめずらしくありません。最高血圧130以上、中性脂肪150mg/dl以上の人もめずらしくありません。多少ポッチャリという程度でしょう。その人たちが「メタボ」と診断され、血圧を下げる薬などが処方されたのです。

本来、「メタボ予備群」の段階では食生活や運動習慣を改善することでメタボになるのを防ぐことが目的です。ところが実際には「ダイエットや糖尿病、高脂血症、高血圧症などに対する積極的な治療により、メタボの予防になり、生活習慣病のリスクを下げる」と、すぐに薬が処方されました。

1/2ページ

最終更新:9/27(金) 6:17
サライ.jp

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事