ここから本文です

注目の大型イベント 「COOK JAPAN PROJECT」って?──秋に来日予定のシェフの味を、現地リポート!

9/28(土) 9:11配信

GQ JAPAN

世界10カ国、総勢30人以上のスターシェフが参加する「COOK JAPAN PROJECT」は、まさに美食の万博だ。日本の食材をテーマに腕をふるうのはどのような料理人なのか?この秋に来日する注目シェフを、現地での試食経験があるライター・大石智子が紹介する。

【この記事の写真を見る!】

世界のスターシェフが日本の食材を使って料理を作るリミテッドレストラン「COOK JAPAN PROJECT」は、10カ月という期間限定であるが、一過性のイベントではないと思っている。それは運営会社であるグラナダの目利きが炸裂しているからだ。2019年の“世界のベストレストラン50”で1位に輝いた南仏の「レストラン ミラズール」(12月)から、近所のおじさんがパエジャをシェアするバルセロナの「スクレント」(2020年1月)まで幅が広い。単にランキング上位から選んだだけではない人選に、現地でシェフに惚れ込み、「このシェフに日本で料理をしてほしい!」と願ったグラナダ関係者の熱量を感じるのだ。

田中淳とコーベ・デスラモルツに注目!

なかでも、秋に来日するメンバーには私が個人的に再訪したい店のシェフが2人いた。パリの「Restaurant A.T.」の田中淳と、ベルギー・ゲントの「Chambre Separee」のコーベ・デスラモルツだ。

まず前者について。初めて田中の料理を食べたのは、フランスで行われたシャンパーニュメゾンMUMMのパーティーでだった。各国メディアが集まる重要な発表会では、回転台の上で回る皿を取るというユニークな演出だったが、料理は明らかにパーティーフードの域を越えていた。そう思ったのは私だけでなく、参加者の手が次々と皿に伸びる。「回っていないA.T.が食べたい!」と強く思い、3カ月後に一泊でパリを訪れたのだった。

食べる前に惹かれるのが、皿の上の色使いだ。飾ったドヤ感は皆無で、山に生える植物のように、合う色同士が静かに並ぶ。そして食べれば、クラシックの力量に基づくソースや、自由な感性による味の重ね方に感嘆。田中は15歳でピエール・ガニェールの本に出会い料理人を志したというが、少年の頃に抱いた世界への憧れが褪せていないと想像してしまう。

衝撃はメインディッシュの鳩とその次のデザートの繋がりだった。松の木でスモークした鳩は基本に忠実なジュをまとい、火入れも素晴らしい。そして鳩の余韻にうっとり浸っているころに出てきたのが、檜の炭のデザートだ。木の風味がするアイスクリームは、消えつつある野性の残り香と一体化。こりゃコーヒーじゃないとワインを聞くと、「鳩に合わせたのと同じものを」と、石灰土壌で作られたマルベック主体の赤を薦められた。すると、完全に繋がった! グレー1色だった炭のデザートは下にベリーが潜んでいたからなおさらだ。なんて洒落た流れ。鳩は出なくとも炭のデザートは日本でも提供の可能性があるので乞うご期待。

コーベに関して気になるのは、彼の店では薪を使うか否か。使う方向で進行中らしいが、もしもそうでなかったとしても、コーベは限られた環境のなかでクリエイティビティを発揮させる人だろうと思う。それも、意外な方向に。なぜなら、型にはまらない哲学をもっているシェフで、ひと言でいえば“ファンク”。初夏に食べたホワイトアスパラガスがいい例だ。ホワイトアスパラは皮を厚めに剥いて食べやすく仕上げるシェフも多いが、コーベはぎりぎりの薄さで剥いたのち直火で焼き、あえてえぐみを感じさせる。実はそのホワイトアスパラは海の近くでとれたものであり、ミネラルを含む土壌が下ごしらえのごとく美しきえぐみを完成させていた。仕上げに胡麻入りのクリーミーなソースをかけてバランスを整えるあたりも流石である。

ちなみに大の音楽好きで、「シェフは料理中でも音楽がやむと、音楽をかけることを優先する」という噂を聞いていたが、そういう場面には出くわさなかった。けれども、ウエイティングスペースにはギターやレコードが並び、男の趣味の部屋のようだった。また、この店ではパンが出ないのだが、帰りがけに「明日の朝ごはんに」と巨大なパンを渡されたのが面白かった。ご丁寧にバター付き。何が起こるか分からない。

以上が現地でのエピソードだ。気鋭の2人のシェフは、私たちに日本の食材の新たな一面を見せてくれるに違いない。

CHEFS

9.19-9.22 Atsushi Tanaka Restaurant A.T.

1980年生まれ、兵庫県出身。「ピエール・ガニェール・ア・東京」を経て2009年渡仏。「ピエール・ガニェール・パリ」で部門シェフを務め、スペイン、ベルギー、デンマークで経験を積む。ベルギーでは、実はコーベの店で働いていた。14年に「Restaurant A.T.」を開業。

1/2ページ

最終更新:9/28(土) 9:11
GQ JAPAN

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事