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【書評】「ホンマの姿」を求めて:『仲野教授のそろそろ大阪の話をしよう』

10/1(火) 16:02配信

nippon.com

板倉 君枝 (ニッポンドットコム)

「大阪人も非大阪人も、もっと大阪のホンマの姿を知っておかなあかんのとちゃうんか」。そんな思いに駆られた「生粋の大阪人」かつ自称「お笑い系研究者」の病理学者・仲野徹さんが、多彩な分野で活躍する12人と大阪文化を語る。

近頃の大阪関連のニュースと言えば、4月の大阪府知事・市長のダブル選挙、夏の参院選で連勝した大阪維新の会と“闇営業” 問題も含め吉本興業に関するネタが多い。維新の会と吉本はタッグを組み、2025年大阪万博、またカジノ招致に向けて奮戦中だ。「大阪都構想」を巡る議論も再び息を吹き返した。大阪の新たな繁栄を目指すのは結構だが、華々しい拡大路線ばかりで大丈夫ですかと思ったりもする。大阪庶民の本音はどうなのかと少し気になる。

もちろん、大阪だろうと東京だろうと、感じ方、考え方は人それぞれ、人生いろいろである。ひと言ではくくれない。維新や吉本とは離れて、ステレオタイプではない「大阪の人ですら普段気付かないような大阪」の面白さを追求するのが『仲野教授のそろそろ大阪の話をしよう』(ちいさいミシマ社)だ。大阪大学大学院の仲野徹教授と大阪を深く知る12人の対談集で、これはとてもおもろい。

B級グルメとソース文化

仲野教授は「いろんな細胞はどうやってできてくるのだろうか」を研究する病理学者ながら、自称「お笑い系研究者」だ。とは言っても、『エピジェネティクス』(岩波新書)、『こわいのもの知らずの病理学』(晶文社)などの著書は、病理学を身近に感じてほしいという気持ちが伝わる真面目な本。今回もお笑い系ではないが、大阪弁の飛び交う気軽な(でも内容の濃い)おしゃべりを、こちらも肩の力を抜いて聞いている気分だ。

12人の対談相手は学者から元芸妓(げいぎ)、芥川賞受賞作家など多彩で、大阪弁、食、私鉄、上方落語、浪花音楽とさまざまな切り口で大阪を熱く語る。ふぐ料理のコースを食べ、ひれ酒をすすりながら(全国のふぐの50~60%は大阪で消費されているとか)、あるいはお好み焼きを食べながらのうらやましい対談もある。

食に関しては、編集者・文筆家の江広毅さんが「うますぎる」大阪B級グルメを語り、イベントプロデューサーで『大阪ソースダイバー ―下町文化としてのソースを巡る、味と思考の旅』という著書がある堀埜浩二(ほりの・こうじ)さんが奥の深いソース文化を解説する。お好み焼きは東京でもよく目にするが、大阪では「中学校の校区ごとにお好み焼き屋があって、校区が違うお好み焼き屋にはその地域に住んでいる友達と一緒やないと入られへん」とか…。そして、串カツ同様、メーカーが店側の要望に応じて独自のソースを作るそうだ。そんな背景もあってか、関西にはさまざまな「地ソース」メーカーが存在する。ちなみに大阪ではポテトサラダにウスターソース(とんかつソースではないことがポイント)をかけるのが普通らしく、天ぷらにもかけるらしい。機会があれば、さまざまな地ソースで試してみたい。

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最終更新:10/1(火) 16:02
nippon.com

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