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夫のDVで顔面移植を余儀なくされて6年後、拒絶反応が始まった

10/4(金) 7:30配信

クーリエ・ジャポン

夫のDVによって顔面に大怪我を負った女性が、顔のあらゆるパーツを移植して生活を取り戻した。だがその6年後、身体が「新しい顔」を拒絶するようになった。世界でもまだ40例ほどしかない「顔面移植」は、彼女の人生をどう変えたのか──。

12年前、米ニューハンプシャー州に住むカルメン・ブランディン・タールトンは、別居していた夫から野球のバットで殴られ、苛性アルカリ溶液を体にかけられて、ほぼ全身に火傷を負った。

彼女は襲撃から3ヵ月間で、40回近くの手術に耐えた。何十回もの輸血や、移植された首と顔の皮膚、鼻、唇、筋肉、神経、動脈は、彼女の免疫システムを刺激し、攻撃した。

そこで、医師たちはリスクの高い解決策を提案した。それは、タールトンの免疫システムを停止させるというものだった。それは同時に、彼女を感染症の危険にさらすことを意味していた。

結果、その方法はうまくいった。そして、2013年に受けた顔面移植のおかげで、タールトンは生活の一部を取り戻した。合成角膜によって片目の視力が戻り、ピアノを弾いたり、街を歩き回ったりすることができるまでに回復した。

再移植を受けるか、傷だらけの顔に戻るか

だが、現在51歳になった彼女の顔の組織は黒ずみ、死滅していっている。体内の免疫システムが、顔を完全に拒絶するようになってしまったのだ。

タールトンは2つの厳しい選択肢に向き合うことになった──別の新たな顔面移植を受けるか、あるいは顔の組織が急速に機能しなくなった場合、再建手術をする前の傷だらけの外見に戻るかだ。米紙「ボストン・グローブ」の取材に対し、彼女はこう語る。

「未知の領域にいることを、私たちは知っています。悲惨な失敗をしたくはありません」

顔面の寿命はわからない

腎臓、心臓、肺などの臓器移植の場合、新しい身体の中での寿命は限られていることがほとんどだ。しかし、顔面移植の分野はまだ実験段階であり、世界中でも約40回しか実施されていない。そのため、長期の研究もリスク評価も存在しない、と医師たちは警告する。

ボストンにあるブリンガム・アンド・ウィメンズ病院の整形外科移植のディレクターで、タールトンの外科医の1人でもあるボーダン・ポマハックは、ボストン・グローブに対してこう話す。

「わからないことは山積みですが、私たちは新しいことを次々と発見しています。ただ、『新しい顔が患者と一生を共にできる』と期待するのは、現実的ではありません」

2008年にアメリカ初の顔面移植を率いたクリーブランド・クリニックの移植外科医ブライアン・ガストマンは、これまで多くの顔面移植が失敗していると語る。彼は言う。

「すべての患者に再移植が必要になる、と我々は考えています」

AP通信の報告によると、アメリカにおいて顔面移植された顔を失った例はない。とはいえフランスでは、ある男性が最初の顔に拒絶反応を起こしたのち、2度目の顔面移植手術を受けている。

「折り合いをつけなければいけない」

タールトンはもう一度顔面移植をするか、傷ついた顔に戻るかどうかの決定を待っている。免疫システムは回復したものの、ほかの問題も出てきた。目の合成角膜は機能しなくなり、ほぼ完全に盲目になったのだ。盲導犬の申請もしている。タールトンはこう語る。

「物事が望まない方向に進んでしまったら、それと折り合いを付けなければいけません。私は元のように戻ってみせます。どうやってかはわかりませんが、乗り越えてみせます」

彼女はピアノを弾き、歌を歌いながら、将来できるであろう孫を待ちわびている。

Alex Horton

最終更新:10/4(金) 8:16
クーリエ・ジャポン

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