ここから本文です

多国間貿易体制を脅かす日米貿易協定 。WTO違反をしてでも米国の要望に応えるのか

10/7(月) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

米国主導の片務的な貿易協定

 2019年9月25日、ニューヨークでの国連総会のサイドラインで、日米首脳は日米貿易協定の最終合意に達し、日米共同声明*に署名した。当初、両国政府はここで協定文の署名を目指していたが、法的精査が間に合わず共同声明の署名にとどまった。政府は協定文署名を「10月上旬あたり」と説明するが、臨時国会が始まった10月4日時点でも日程は不明のままで、政府による「協定の概要」**という説明資料は公開されたものの、肝心な協定文本体については、国会議員はもちろん国民の誰一人として読むことができない。
<* 「日米共同声明」(2019年9月25日)>
<**「日米貿易協定、日米デジタル貿易協定の概要」(2019年9月26日公表)>

⇒【グラフ】セーフガード発動基準数量

 それでも、政府の「概要」や報道によって、すでに日米貿易協定は安倍首相のいう「ウィンウィンの協定」ではなく、日本が一方的に米国に譲歩したという多くの指摘がなされている。政府・財界からは「自動車の制裁関税を回避できた」「農産物関税の撤廃はTPP水準にとどまった」として評価する声ばかりだが、そもそも交渉の初期設定から検証すべきである。

 日米貿易協定交渉は、米国による自動車への25%制裁関税を恐れた日本が、これを避けることを唯一で最大の「成果」と決め、代わりに「TPP水準まで農作物関税を撤廃する」というカードを先に切ってしまった。これが交渉の力関係を決定的に規定し、米国に主導権を握られた状態で交渉は進んだ。

 結果は、日本はTPP水準まで農産物関税の譲歩をした一方、米国はTPPで約束した自動車関税撤廃をしていない。さらに、日本の最大目標の自動車への報復関税の回避については、先述の共同声明で「日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない」という曖昧な表現にとどまり、米国が将来この措置を取らないという確約も得られていない。まさに非対称で片務的な交渉と言える。

 しかも2018年9月に日米貿易協定の交渉入りが決定された時点から、この協定は関税交渉の後に投資やサービスなど他分野が交渉されるという二段階方式が規定されており、仮に今回最終合意した協定が発効しても、新たに第二ラウンドが始まる可能性もある。その影響や交渉プロセス、今後の見通しは改めて臨時国会で徹底検証されるべきである。

 一方、日米貿易協定は国内への影響にとどまらず、日米以外の他国や国際的な貿易レジーム(体制)にも少なからず影響を及ぼすことになるが、残念ながらこの点はメディアでも十分に扱われていない。本稿ではこの点について考える。

1/8ページ

最終更新:10/7(月) 8:33
HARBOR BUSINESS Online

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事