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ツイッター動画が人生を変えた......ホームレス・シンガーに続々とオファー

10/8(火) 18:31配信

ニューズウィーク日本版

──21世紀のアメリカンドリームは1本のSNSから

9月27日、1本のツイッター動画が、ある女性の人生を変えた。米ロサンゼルスの地下鉄駅で歌っていたホームレス女性の歌声に感動したロサンゼルス市警(LAPD)の警官が、動画を撮って次のように書いてツイッターに投稿した。「LAを自分の街だと呼ぶ人は400万人。400万の物語がある。400万の声がある……足を止めてひとつの声に耳を傾けずにいられなくなることもある。美しいものを聞くために」

● 動画:エミリー・ザモールカさんの歌声

このツイートは6000回以上リツイートされ、現在の動画再生回数は110万回以上に達している。米NBCニュースは、動画があまりにも話題になったため、この人物が誰なのかを割り出そうと南カリフォルニアは大騒ぎになったと伝えている。

女性は、約30年前にロシアから米国にわたったエミリー・ザモールカさん(52)だということが明らかになった。ザモールカさんは、正式に音楽を学んだことはない。ロサンゼルス・タイムズ(LAタイムズ)によると、ロシアに住んでいた子どもの頃、テレビでやっていたオペラを真似して歌を覚えた。高校でバイオリンとピアノの弾き方を教わった。

24歳の時に米国に移り、ミズーリー州やワシントン州などで暮らしていた。すい臓と肝臓の不調に悩まされ、ロシア出身の友人にロサンゼルスの病院を紹介され、ロスにやってきたようだ。数カ月の入院を経てようやく体調が回復すると、音楽を教えながら生計を立てていた。

しかし金銭的に援助してくれていた友人が亡くなり、生活費の足しとして路上でバイオリンを弾くようになったという。またCBSロサンゼルスなどによると、体調を崩したときの医療費がかさみ、その返済にも苦労していたようだ。

そんなとき、1万ドル相当という商売道具のバイオリンが人に取られ、壊されてしまった。そのため家賃が払えなくなり、住んでいた家を追い出されてしまった。ザモールカさんはNBCロサンゼルスに対し、バイオリンは「私の収入源。すべてだった」と話している。そして今度は、絶対に盗まれない楽器──声を使ってパフォーマンスを始めたのだ。

■ レコードデビューも間近か

LAタイムズによると、ザモールカさんが地下鉄駅で歌っていたとき、警察官が近づいてきた。歌っている様子を録画したいと言われたのだが、ザモールカさんは当初、断ったという。「怯えてしまった。警官が来て写真を撮りたいって言われたらどう思う?」とそのときの心境をLAタイムズに語った。警官が食い下がったため、動画の撮影に応じたそうだ。

ザモールカさんがNBCロサンゼルスに語った話によると、友達が「テレビに出ているよ」と教えてくれるまで、自分の歌声が話題になっていることをまったく知らなかったという。

CBSロサンゼルスとのインタビューでザモールカさんは、動画を投稿した警官に「私の人生を変えてくれた」と涙ながらに感謝した。また、今回注目されたことで、ホームレス生活を解消できればと願っていること、そして地下鉄ではなくステージで歌えるように、歌のトレーニングを受けたいと話しているとCBSロサンゼルスは伝えている。

この夢はまもなくかないそうだ。動画を見た人たちから、仕事のオファーや支援が続々とザモールカさんの手元に舞い込んでいる。5日、ロサンゼルス市内サンペドロにあるリトルイタリー(イタリア街)で行われたイベントで、動画で歌っていたイタリアのオペラを披露した(KTLA)。このイベントを主催したロサンゼルス市議会のジョー・バスカイーノ議員は現在、ザモールカさんの住む場所を見つけようと動いているという。

また米CBSニュースによると、グラミー賞候補にもなったことがある音楽プロデューサー、ジョエル・ダイアモンド氏が現在、ザモールカさんと契約するべく、本人と連絡を取ろうとしているという話だ。ダイアモンド氏はすでに曲のデモテープを作り、あとはザモールカさんに歌ってもらうだけの状態になっていると明かす。今後数週間のうちにはレコーディングを進めたい考えだ。ダイアモンド氏所有のレーベルからのリリースを目指すという。クラシックとエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)のクロスオーバーになる予定だ。

松丸さとみ

最終更新:10/8(火) 19:09
ニューズウィーク日本版

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