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全世代型社会保障と在職老齢年金の見直し

10/9(水) 9:26配信

NRI研究員の時事解説

全世代型社会保障とは何か

安倍政権が総仕上げと位置付ける、社会保障制度改革の議論がいよいよ本格化してきた。政府は2020年初めの通常国会に年金・介護制度改革の法案を提出することを目指しており、その具体策が次第に固まりつつある。政府は「全世代型社会保障検討会議」を新たに創設し、9月20日にその初会合が開かれた。法案策定に向けた具体的な議論は、政府・官庁主導で進められている。

ところで、全世代型社会保障制度というのは、現政権の社会保障政策のいわば看板となっている。元々は、これは民主党政権時代に野党だった自民、公明両党が「社会保障と税の一体改革」で打ち出した概念だ。

10月から導入された幼児教育の無償化はこうした考えを実現するものだ。この政策は、退職世代だけでなく現役世代にも広く社会保障制度の恩恵が及ぶことを目指している。

全世代型社会保障の考え方の背景には、海外と比較すると、日本の社会保障制度における給付が退職世代により厚くなっていると意識されたことがあるのかもしれない。しかし、それ以上に、社会保障制度を巡る現役世代の不満を緩和するために打ち出された考え方、という側面が強いだろう。

しかし、年金制度、介護制度などはそもそも退職で所得基盤を失った高齢者に資金を給付し、生活の安定を図るように設計されたものだ。もちろん社会保障制度にはその他にも失業保険、子育て支援、生活保護など多種あるが、高齢化進展の下、現在最も改革が必要となっているのは、そうした制度である。

全世代型はバラマキにつながる惧れ

確かにそれらでは、世代間の給付に大きな格差が生じるが、それはそもそもそういう制度であるからだ。現役世代が保険料などで制度を支え、主に退職世代が受給すること自体に不満を感じる者はないだろう。自身が退職世代となれば、受給するようになるからだ。

社会保障制度を巡って現役世代、特に若年層が感じる不公平感とは、給付ではなく主に負担に関するものではないか。退職世代を支えるために現役世代は大きな負担がかかる一方、自らが退職世代となった際に、現在の退職世代よりも給付水準が低い、といった不公平感だ。

ところが、全世代型社会保障制度というと、負担の公正性を取り戻すというよりも、現役世代にも給付をどんどん拡大させていく、というニュアンスがあり、バラマキ的な政策につながる可能性を感じさせる。これは、本来の社会保障制度の改革の方向とは異なるものではないか。所得水準に配慮しつつ、あるいは退職時期の延長を図りつつ、給付の削減を進めていく以外に有効な改革はないだろう。

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最終更新:10/9(水) 9:54
NRI研究員の時事解説

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