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100周年を迎えるKLM新型開発機「フライング-V」の真意とは?

10/9(水) 12:05配信

GQ JAPAN

デルフト工科大学が研究開発中でKLMオランダ航空が協力合意を結んだ新型飛行機「フライング-V」が話題だ。インパクト抜群の形状が人目を引くが、もっと注目すべきは未来を見据えたその機能だった。

【写真を見る】斬新な全翼機型!

地球に優しいV字

この夏、KLMオランダ航空とデルフト工科大学が共同で発表した新型飛行機「フライング-V」は、世界の度肝を抜いた。これまでのような胴体がなくV字型の双胴のような翼を持つ斬新なフォルムは、ギブソン社の同名のギターを思わせる。

ぶっ飛んだ企画にも思えるだろうが、この「フライング-V」は、近い将来、本気で飛ぶ。KLMとデルフト工科大学の研究開発で実用化が進められており、2040~2050年の施行を目処に研究を詰めている。

推定では長さ55m、幅65m、高さ17mで、定員は314名。全座席と貨物室、燃料タンクを両翼に収め、圧巻のV字のアウトラインを描く。しかも、案外実用的であるという。機体は短いが翼幅は「A350」と同一であり、搭乗ゲートや滑走路については空港の既存インフラをそのまま利用できるのが利点だ。

そして何より、KLMがこの飛行機の実用化に情熱を注ぐ根底には、環境への配慮がある。「フライング-V」は空気抵抗を低減させ軽量化を可能とする形状のため、燃費効率が高いとされる「A350」と比べても、燃料消費量をさらに20%削減できるそうだ。

この斬新なフォルムは、二酸化炭素排出量の削減を模索した結果だったという。今年10月7日に100周年を迎えたKLMは、次の100年に向けて、「Fly Responsibly(責任ある航行)」というスローガンを掲げ、商業飛行にともなう環境問題に積極的に取り組むことを宣言している。

空を飛ぶことには代償がある

飛行機に乗って移動することは、もはや多くの人にとって当たり前になっている。筆者もいわゆる空マイラーで、「年内にあと1万5000マイル……」なんて考えていたりした。しかし、その背景にある環境問題には無頓着だった。

航空輸送アクショングループ(ATAG)によると、世界の航空業界が排出する二酸化炭素量は、2017年時点で8億5900万トンにのぼり、これは人為的な二酸化炭素排出量の全体のうち約2%を占めるという。

早くからCO2問題を意識していたKLMは、1990年にサステイナビリティ・センターを社内に設置し、2011年には世界で初めて使用済みの食用油を配合したバイオ燃料を旅客機に導入した。ロサンゼルス-アムステルダム間の定期便の燃油を一部バイオにして、バイオ燃料を大陸間の飛行に使用するヨーロッパ唯一のエアラインとなった。また、2022年までに15機導入する「Boing787-10」は、「Boeing747」比で42%の燃料を削減し、二酸化炭素の排出を31%削減するという。

100周年を迎えるメモリアルイヤーにあたり、CEOのピーター・エルバース氏は下記の声明を出した。

「私たちKLMオランダ航空は、航空業界全体に、重大な責任を担っていることを改めて自覚するよう呼びかけたいと思います。同業他社との日々の競争は重んじていますが、1社だけでなく、業界が一丸となって協力しなければ航空産業における持続可能な未来は実現できません。だからこそ、私たちは、これまでの取り組みのノウハウや成果を皆さんとシェアすることを選択しました。具体的には、弊社のカーボンオフセットプログラム“CO2 Zero”の使用を無償提供します。また、弊社のバイオ燃料プログラムにもぜひご参加ください」

自社のノウハウを無償提供してでも、CO2を減らしたいと言う。次に続くひと言にさらに驚かされた。

「旅行者のみなさまも、その時々の状況によって航空機を利用することが本当に必要か考えてみませんか?」

飛行機に乗ることを推奨していない! 記念すべき100周年を迎える航空会社の代表の言葉としては、私には予想外の言葉だった。100周年のビデオメッセージも、明確に同じテンションだ。具体性は増し、「飛行機の代わりに電車で移動することはできませんか?」と呼びかける(今年9月13日にはアムステルダム-ブラッセル間の5便を4便に減らし、その代わりに、高速鉄道タリスとの協力を発表した)。

最後にきっちりオチまでついているので、ぜひこのビデオメッセージを見ていただきたい。企業CMとしても秀逸な動画を見て、次の旅で飛行機に乗る時、いつもより荷物を少し減らそうと思い始めた。それが二酸化炭素の排出量に関わることであるとは、今までは知らなかった。

「フライング-V」は、研究開発が順調に進めば、数十年後には各社の商業飛行に使われるようになっているかもしれない。最初は特異な形に見えたV字型飛行機の実現を、願ってやまない。

文・大石智子

最終更新:10/9(水) 12:05
GQ JAPAN

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