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子どもを預けても取材したかった――『つけびの村』が書籍化するまで

10/9(水) 21:00配信

ESSE-online

なかなか売れないと言われるノンフィクションの分野で、ある本が脚光を浴びています。高橋ユキ著、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社刊)。WEBで話題を呼んだことがきっかけで書籍化、しかも書き手は一児の母でもある女性という一冊です。

出版に至るまでの経緯や、事件ノンフィクションを取り巻く状況について、高橋さんにお話を伺いました。

なんとか時間を捻出して、東京から遠く離れた場所での取材を繰り返した

2013年夏、山口県・周南市の集落で5人の村人が殺害された「山口連続殺人放火事件」。山奥の寂れた村へIターンした男性が起こした殺人事件は、当時「現代の八つ墓村」として、ワイドショーやSNSでセンセーショナルに扱われました。
しかし、日々ものすごい速度で更新されるニュースの波に流され、もはや記憶に残っている人も少ないのでは。この事件が再び注目されることになったのが、高橋さんの「note」(※WEB投稿サービス)への投稿でした。

●謝恩会の準備をしている傍らで、購入通知がすごいことに

もともとある雑誌の取材で、現地に赴いた高橋さん。そのときは「山口連続殺人放火事件の舞台となった村には、『夜這い』の風習があるらしいので調べてほしい」という依頼でしたが、村には「夜這い」とは別に、テレビやネットのニュースには載っていない事件の謎が残っていることに気づき、独自に取材を進めます。

取材した内容をまとめ、ノンフィクションの賞に応募したものの、落選。出版社に企画を持ち込んでもよい返事は得られず、宙ぶらりんになっていた原稿を「note」に有料記事として投稿してみることに。

最初はあまり注目されなかったものの、今年3月に突如Twitterを中心にバズが起こり、一躍話題に。その頃、高橋さんは息子さんの保育園の謝恩会の幹事で慌ただしくしていましたが、「パパたちが踊る『U.S.A.』の完成度をチェックしているところに、ひっきりなしに購入通知が届いた」といいます。

――この本の出版経緯は新しい形だと思います。高橋さんがずっと諦めなかったのがすごいと感じました。

「じつは、いったん書き上げたあとは、諦めていたんです。でも事件の節目の年に、話を聞かせてくれた方が亡くなられて、形にしたいという想いは強くなりました。でも紙媒体には掲載先がなく、ウェブに投稿することにしたんです。『note』って、生き方エッセー、仕事のハウツーコラムが多いんですが、そんな場所で、ノンフィクションがどう受け止められるのかという単純な興味もありました。
あと、夫が厳しかったんですよ。『お前は子どもを俺に預けて何回も遠方の山奥に行ったのに、仕事にできてない』と(笑)」

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最終更新:10/9(水) 21:00
ESSE-online

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