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法人税の大幅減税を決断したインド政府の思惑

10/9(水) 12:40配信

Wedge

 9月20日インド政府は従来25%もしくは30%(会社規模による)だった法人税率を22%まで引き下げると発表した。こういった税制改正はインドでは特に珍しいことではないのだが、日本の感覚では理解しにくい点が1つ。それはこの減税が「2019年4月1日から」遡って適用されることとなった点だ。

 すでに9月15日に第2回の予定納税を旧税率で済ませている会社がたくさんあるハズなので、次の12月の第3回の予定納税時にはその再計算が行われることになると予想され、私のように会計税務を生業とする者にとっては少々面倒な手続きが必要となる。

 ともかくこの減税の結果各種細かい追加税額を含めたインドの実効税率は約25%となり、新興国の中では比較的企業の税負担が重いとされていたインドは大幅な法人への減税を決断したことになる。

 さらに2019年10月1日以降に設立される製造業を業とする法人についてはその法人税率を15%とすること、加えて従来より悪名高かった最低代替税(MAT)に関してもその税率を18.5%から15%に引き下げるとの発表が続いた。 

 ドラスティックな法人税減税、しかも今年の2月、7月と2回も機会があった税制改正発表のタイミングではなく、年度も半分が過ぎようとしたこのタイミングでのいきなりの発表、そしてそれが2019年4月1日から遡及的に適用されるという点、日本からはあまり理解しにくいこれらの点を踏まえて、インド経済のおかれている状況やインド政府の意図を少し考えてみよう。

2019-20年度、インドは圧倒的に景気が悪い

 インド関連のビジネスをしている人ならばもう十分感じ取っていると思うが、2019年4月~2020年3月のいわゆる2020年3月期、インド経済の状況は非常に悪い。

 代表的なものが自動車産業。今インドでは自動車業界はどこも売上が著しく悪く、ここ数カ月ずっと前年同月比40%近い売上減を続けている。さすがに10月末にあるディワリのお祭り以降は持ち直すとは言われているものの、それでも1年トータルで自動車産業の売上は10%以上落ちると言われている。

 実際、自動車産業で働く私の友達のインド人にも解雇される人が続出しており、私にも「日系の自動車会社で働き口があったら紹介してほしい」と履歴書を託されるケースが多い。ただ同業に転職しようとしても自動車産業はどこも不景気であり、再就職もうまくいかないのが現実だ。また、私は例年11月にインドの製造業を見学するツアーのサポートを現地でしているのだが、今年は見学を断られるケースが増えている。理由は簡単で、今多くの自動車会社が生産調整のために工場のラインを止める計画を立ており、その影響で多くの部品会社もその操業を一時的に止めたり、余剰人員の整理を始めたりしているのだ。

 これで困るのがモディ政権だ。

 モディ政権は今年5月に行われた下院総選挙で自らの経済政策の実績を大きくアピールしていた。2020年3月期の予想経済成長率は6.9%であるとし、これは中国を中心とする世界の主要新興国の中ではもっとも高い数値であるとし、政権の経済運営の大きく喧伝した。そして実際の選挙では大勝を果たしたからだ。

 しかしその選挙が終わるや否や自動車不況が顕在化し、国民の目からも6.9%といいう数字に疑問符が付き始めた。そこで、モディ政権は今回、電撃的に法人への大幅な減税を敢行することとなったという流れだ。

 従来、インドの「減税」と言えば、選挙を意識した低所得層への個人所得税の減税という「バラマキ」がメインであったのだが、さすがのインド政府もこの不景気は看過できなかったようで、経済界から強い要望もあった法人税減税に踏み切ったのである。

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最終更新:10/9(水) 12:40
Wedge

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