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蛭子能収「葬式に行くのは、お金と時間のムダ」

10/10(木) 11:15配信

プレジデントオンライン

他人の葬儀には行くべきか、行かないべきか。漫画家の蛭子能収さんは「葬式に出るとつい笑ってしまう。だから葬式に行くのが嫌だし、自分の葬式にも来てもらわなくていいと思っている。死んだ後に他人の時間と金を奪いたくない」と本音を吐露する――。

 ※本稿は、蛭子能収『死にたくない 一億総終活時代の人生観』(角川新書)の一部を再編集したものです。

■葬式に行かなくてはと思うと憂鬱になる

 そういえば最近、昭和の俳優さんをはじめ著名人が亡くなることが増えてきました。とくに平成の終わりごろは、なんだかとても多かった気がします。ただ、僕の知っている人も何人か亡くなったものの、葬式にはまったく行きませんでした。線香をあげにも行っていないし、それはちょっと悪いなあと思っています。

 ただ、これはほうぼうで言っていることなのだけど、僕は人の葬式にまったく行かない代わりに、自分の葬式にも来てもらわなくていいと考えています。不謹慎なのかもしれないけれど、「あの人亡くなったらしいよ。葬式に行かなくては」なんて言われると、「ああ、また行かなくちゃいけないのか……」って憂鬱になってしまうのです。

 なぜなら、単純に葬式に行くのがものすごく嫌だから、です。そんな人って、本当は意外に多いような気がするな。

 たしかに、故人との最後のお別れの機会なので、「いま行かずしていつ行くのか? 」という気持ちはなんとなく理解できます。でも、死んだ時点ですでに別れちゃっているわけだし、生きている人がわざわざ集まって死んだ人を見に行くのも……って思うのです。

 それなら、生きているうちに会ったほうがいいじゃないですか。

■葬式に行くと笑って逝きそうになる

 でも、僕が葬式に行かないのにはもっと大きな理由があって、これこそ不謹慎極まりないのですけど……僕は葬式に行くと、葬儀の最中に必ず笑ってしまうのです。

 これはもうなぜなのか自分でもよくわかりません。子どものころからの悪いクセで、笑いだしたらもうどうしても止まらなくなるのです。とにかくその場がおかしくておかしくて、以前も友だちとふたりで知人の葬儀に行ったときに笑いが止まらなくなったことがありました。友だちには横から真顔で怒られるし、でもおかしいしで本当に苦しかった。

 そんな振る舞いは、世間的に見たらかなり洒落にならないでしょう。

 だから、僕のような葬式で笑い転げる人間は、そもそもその場に行かないほうがいい。

 まだ若いときは葬式といってもどこか他人事でしたけど、71歳になったいまなら、もしかしたら、僕も本当に悲しい人たちの心境がわかるようになっているかもしれません。それでも、「行ってもし失敗したら……」と思うと怖くて行けなくなるのです。一般の人ならまだカメラがないからいいけれど、芸能人の葬式に行って、僕の満面の笑みが全国に中継されると思うと、さすがに二の足を踏んでしまいます。

■葬式全体が“喜劇”のように見えてくる

 でも、その一般の人の葬式であっても、以前は「蛭子さん今日は絶対笑わないでよ! 」と言われて「なに言ってるの。笑うわけないでしょう」などと返して行っていたのですが、結局は笑ってしまうのです。

 隣席で「蛭子さんダメだよ、ダメだよ! 」と、力の限り腕をつねられているのに、それでも笑いを止めることができず、やがて呼吸もどんどん苦しくなって、自分のほうがこの葬式で逝ってしまうのではないかということもあったほどです。

 自分でもこの抑えられない衝動がなんなのか考えてみたこともあります。たぶん、僕は建前で悲しいふりをするのが苦手で、なのにそこにいる全員が揃いも揃って見事に神妙な顔をしているのを目にすると、もう葬式全体が“喜劇”のように見えてくるんです。そして、いちどその「魔のループ」に入ってしまったら、完全に終了です。がまんすればするほど、笑いが僕を攻め立ててくるのです。

 また、そんな儀式に参加して一生懸命まわりと同じように振舞おうとしている自分のことも、ひたすらおかしくなってしまう。言ってみれば、僕は他人の死にあまり興味がないのかもしれません。いつも「死にたくない」と思って生きているせいか、いったん死んでしまった人間には、ほとんど興味が持てないようなのです。

 誤解してほしくないのは、葬式で悲しんでいる人たちが滑稽に見えるとか、おかしいというわけじゃありません。

 ただ、みんな揃って同じ行動をしているその場が、なんだか奇妙で不思議な空間に見えてくる。僕だって、ある尊敬していた漫画家さんが死んだときはちょっと寂しかったし、さすがに線香をあげに行ったのですが、それでもやっぱり途中からどうにもおかしくなって、笑いが止まらなくなってしまいました。

 そんなこともあって、僕はなるべく葬式には近づかないようにしています。誰かが気分を害することは、とにかくできる限りしたくないですから。

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最終更新:10/10(木) 15:55
プレジデントオンライン

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