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前から「歩きスマホ」の人…よけずにぶつかると自分が暴行罪? 理不尽では? 弁護士に聞く

10/10(木) 8:10配信

オトナンサー

 街中で「歩きスマホ」をしている人とぶつかりそうになった経験のある人は多いと思います。スマホに夢中の人が自分の方へ向かってきたとき、ぶつからないようによける人が多いはずですが、中には「マナーが悪く危ないから、注意する意味でよけない」「歩きスマホに腹が立つから、わざとぶつかる」という声もネット上にはあります。しかし、よけずにわざとぶつかると、暴行罪に問われる可能性があるそうです。

 マナーの悪い人のために道を譲るのは理不尽にも思えますが、仕方のないことなのでしょうか。グラディアトル法律事務所の井上圭章弁護士に聞きました。

殴ったり、蹴ったりするわけではないが…

Q.「歩きスマホ」をしている人が前から向かってきて、自分の方がよけずにわざとぶつかった場合、暴行罪に問われる可能性があるのは本当ですか。

井上さん「わざと人にぶつかる行為は、暴行罪に問われる可能性があります。法律の上では、人の身体に対し、不法に有形力(物理的な力)を行使したが、傷害結果が生じなかった場合に暴行罪が成立します。わざとぶつかる行為は、この『人の身体に対する不法な有形力の行使』に当てはまることとなり、暴行罪に問われる可能性があるのです。ただし、軽くぶつかった程度では、暴行罪に問われる可能性は低いでしょう」

Q.相手を押したわけでもないのに、暴行罪になる可能性があるのですね。

井上さん「人を殴ったり、蹴ったり、押したりしたわけでもないのに『なぜ暴行?』と思われるかもしれません。暴行罪で規定されている『暴行』は、どのような行為であっても、『人の身体に対する不法な有形力の行使』といえる限り『暴行』にあたるのです。この点は、一般的なイメージと法律の考え方とで、少しずれがあるように感じるかもしれませんね」

Q.「歩きスマホ」の相手とぶつかった人が暴行罪に問われた事例はありますか。

井上さん「暴行罪に問われた事例とは少し違いますが、同様の事例として、2017年11月13日の神戸地方裁判所の判決があります。事案は、日頃から歩きスマホに不満を持っていたAさんが、駅のホームで歩きスマホをしていたBさんに対し、すれ違いざまに右肩をぶつけ、それによりBさんが転倒、全治約1カ月を要する傷害を負わせたという内容です。この事例では、傷害結果が生じていることもあり、暴行罪ではなく傷害罪が成立すると判断され、懲役1年6月、執行猶予3年の判決となりました」

Q.前を見て歩いていない歩きスマホの人は、法的責任を問われないのでしょうか。

井上さん「歩きスマホの人が法的責任を問われる場合もあります。例えば、混雑する駅のホームや、交通量や人通りの多い道路の歩道などで歩きスマホをし、歩行者や自転車などとぶつかり、その人にけがをさせてしまった場合、過失傷害罪(刑法209条、30万円以下の罰金または科料)に問われる可能性があります。

また、その人が死亡した場合は、過失致死罪(刑法210条、50万円以下の罰金)に問われる可能性もあります。さらに、民事上の責任として、不法行為責任に問われる可能性があります。この場合、ぶつかった相手に生じた損害について賠償する責任が生じます」

Q.歩きスマホの人が法的責任を問われることがあるとはいえ、歩きスマホそのものを規制する法律はなく、条例があるのも一部の自治体にとどまっています。現状では、スマホに夢中の人が自分の方に向かってきたとき、自らよけるしかないのですか。

井上さん「混雑する駅のホームや階段、交通量や人通りの多い歩道上での歩行は、歩きスマホをしている人に限らず、歩行者全員がお互いに、ぶつかって相手にけがをさせることのないように注意する義務があります。

確かに、スマホに夢中の人が悪いと思ってしまう気持ちは分かります。しかし、自分自身も人にぶつからないよう注意しないといけない立場ですので、もし、スマホに夢中の人が自分の方に向かってきてぶつかりそうになったときは、自分がよけるべきです。それは無用なトラブルを避けることにもつながります」

Q.普通の歩行者が道を譲らないといけない現状は、やはり理不尽だと思います。なぜ、歩きスマホに夢中で前方を見ていない人を規制できないのでしょうか。今後も規制できない状況が続きますか。

井上さん「最近は歩きスマホをしている光景が多く見られ、それによる事故やトラブルも年々増えてきているようです。確かに、人にぶつかってけがをさせることのないよう注意して歩いている歩行者からすると、歩きスマホに夢中な人が堂々と進む姿は自己中心的に見え、不快に感じ、道を譲ることは納得のいかない気持ちになるかもしれませんが、道を譲らず歩いてよいということにはなりません。

ただ、最近議論を呼んでいる『あおり運転』のように、歩きスマホの危険性が多くの人に注目され、問題意識を持つようになると、今後、歩きスマホを規制する条例や法律の制定が進むことになるかもしれません。アメリカ・ハワイ州ホノルル市では、道路横断中に歩行者が、スマホなどの電子機器を使用することを禁止する条例ができています。日本でも、歩きスマホに対する問題意識が広がってきているため、条例や法律の制定が進み、歩きスマホの規制がされる日が来るかもしれません」

オトナンサー編集部

最終更新:10/11(金) 7:50
オトナンサー

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