ここから本文です

「日本のドラマで日本語を覚えた」辛い別れを乗り越えて2店舗持つに至った蘇州大餛飩店オーナー<越境厨師の肖像>

10/10(木) 15:31配信

HARBOR BUSINESS Online

◆越境厨師の肖像第3回

その内容の是非はさておき、安倍政権下による入管法改正によって、今後ますます日本社会は多文化共生を余儀なくされることになっていくだろう。そのとき必要なのは、お互いを「知ること」だ。

⇒【画像】蘇州ワンタン。カラフルな5色で見た目もステキ

「知る」ことの第一歩は関心を持つこと。とりわけ「食」は多くの人に異文化への関心という門戸を開く役割を果たす。

 本連載「越境厨師の肖像」では、中華料理愛好家としてさまざまなメディアで執筆を行う愛吃(アイチー)さんのガイドで、リアル中華菜の名店の店主が、いかなる思いで日本に来て、店を始めたのか。その実像に迫っている。

 今回は、小手指と大久保に蘇州の大餛飩を出す店のオーナーである李 文娟さんにご登場頂いた。

日本のトレンディドラマ好きだった少女

「『東京ラブストーリー』『星の金貨』『魔女の条件』……。江蘇省蘇州にて、数々の日本のドラマに釘付けだったあの頃。ストーリー・ドラマの中の日本の雰囲気に興味津々で、夢中で観ているうちに日本語を覚えましたよ。日本語学校は行っていないし、大学の専攻でもなかったのですよ」

 日本のドラマタイトルを次々挙げながら懐かしいねぇと朗らかに笑う李さんはとても流暢な日本語を話す。

 独学で身につけた日本語能力を活かし、蘇州で貿易の仕事に就いていたが、縁あって来日。埼玉県所沢での新生活の幕が開いたのは、2007年末のこと。

 スタートしたての所沢生活で、李さんは「ふたつの楽しみ」を見つけた。

 ひとつめは、市役所主催の外国人交流勉強会。

 週一回開催、基礎的な日本語会話や、生活のルールなどを学ぶ。参加者は、中国のほか、タイ・フィリピン・インドの人々も多く集まり、和やかで楽しく行われていた。のちに「日本の母」と慕える良き師にも出会えた。

 ある日、「日本の母」から、年一回開催される市民フェスティバルに屋台を出店してみないかという提案が。李さんは即参加を決意、得意なケーキを作って出そうと想いを膨らませる。

 ふたつめは、東京の製菓専門学校で学んだこと。
 日本に来て、ひとつのモンブランに出合い、日本のケーキのおいしさに魅了された。すっかり心奪われた李さんは、食べ歩きにのめり込むうちに自身で作れるようになりたいと思うようになったという。

 実はそれは、ゆるやかな趣味としてではなく、「好きなもので手に職をつけ、夫任せになり過ぎず自立した生活を送るのだ」という堅い決意だった。

 そうして本格的に習得したことを活かしカフェを開きたいと目標を立てていた李さんは、早速自分が作ったケーキを食べてもらえる良い機会がやってきて、想いを膨らませたというわけだ。

 が、このあと「母」から再び示された提案が、のちの李さんの人生を大きく動かすことになる。

1/4ページ

最終更新:10/10(木) 16:57
HARBOR BUSINESS Online

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ