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「表現の不自由展・その後」再開へ 萩生田大臣は「補助金不交付」

10/11(金) 16:53配信

週刊金曜日

 女性たちを性奴隷にした日本軍「慰安婦」問題の法的責任を認めない安倍政権がいよいよその本性を現したようだ。

「慰安婦」を象徴する「平和の少女像」や天皇制をめぐる作品への不当な攻撃で展示中止に追い込まれていた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が早ければ10月6日にも再開することが決まった。その一方で、同芸術祭実行委員会の大村秀章会長(愛知県知事)が「展示再開」の意向を表明した翌日(9月26日)、萩生田光一文部科学大臣は、外局である文化庁が採択済みだった補助金約7800万円の不交付を決定。「展示再開」に冷や水を浴びせるにとどまらず、「表現の自由」への深刻な政治的介入につながる危険性がある。

 展示再開は、表現の不自由展実行委員会メンバーが名古屋地裁に申し立てていた仮処分の第3回審尋(9月30日)の場で、同芸術祭実行委員会との間で合意したもの。その5日前(同25日)に「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」が中間報告を出し、「条件つき再開」に言及したため、和解協議の難航が危惧されていた。

 検証委がつけた「条件」とは〈展示方法や解説プログラムの改善・追加〉だが、表現の不自由展実行委のメンバーはこれに対し「展示作品や構成、解説文の内容にまで踏み込んで改変することを条件とするのは検閲であり、それ自体が表現の自由の侵害」(岡本有佳さん)と批判していた。

 そもそも、展示中止の理由は電話・ファクスでの抗議やガソリンテロ予告などの「危機管理上の問題」である。であるなら、安全対策のみを再開の「条件」とすべきで、歴史認識に関わる「解説文」などを変更せよというのは筋が通らない。検証委は事実上「再開への検閲」をしていることになる。

 しかし、開会時の展示方法などキュレーションと一貫性を保持し介入しないことが担保されたことで、表現の不自由展実行委側が「異議は留保」し、事実上の「無条件再開」が実現した。芸術祭の会期は10月14日までで、約1週間の展示再開が確約された形となった。

 いろいろ問題の指摘される検証委だが、中間報告で〈政治的な色彩があったとしても、公立美術館で、あるいは公金を使って行うことは認められる〉と公金支出を認めた点は「補助金不交付」を決めた国よりまだましだ。

【大きな曲がり角】

 補助金不交付をめぐっては、展示中止の前日(8月2日)に菅義偉官房長官が「事前に展示内容がわかっていれば補助金を出さなかった」と受け取れる発言をしたが、その意向どおりの「不交付決定」となった。萩生田文科大臣は「申請のあった内容通りの展示会が実現できていない」などと不交付の理由を述べているが、前述の官房長官発言に照らせば、政府の意にそぐわないと判断された展示会にはカネを出さないという安倍政権の思惑が浮き彫りになる。

 歴史的な事実に目を背け、展示への抗議を煽った河村たかし名古屋市長らの言動も悪質だが、カネで表現を締め付けようという安倍政権の姿勢は国ごと「表現の自由」を窒息させる動きにつながる。事なかれ主義の自治体はこの政府の姿勢を無批判に踏襲するだろう。電話・ファクス攻撃をした卑劣な輩たちの狙いどおりの展開だ。この構図こそが今回の展示中止を生んだ問題の本質ではないか。ヘイトスピーチが蔓延する日本社会の抱える闇も、この構図から発しているように見える。

 大村知事は、自身の「展示再開表明」と今回の補助金不交付との関連性に言及した上で「一方的に不交付が決定されるのは承服できない」として国を提訴する意向を示した。日本ペンクラブも9月26日、不交付決定の撤回を求める吉岡忍会長の談話を発表した。すべての表現者がこうした国の姿勢に立ち向かう必要がある。表現の自由にとどまらず、歴史認識を含めた思想・良心の自由が政治に従属するかどうかの大きな曲がり角に立っている。       

(片岡伸行・記者、2019年10月4日号)

※編注:「表現の不自由展・その後」は、安全対策を強化したうえで、10月8日から展示を再開した。

最終更新:10/11(金) 16:58
週刊金曜日

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