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富裕層を囲い込む「プライベートバンカー」の営業戦略とは?

10/11(金) 7:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

富裕層のため、金融資産のみならず、事業再構築・事業承継についても投資政策書を立案し、長期的に実行を助ける専門家のことを「プライベートバンカー」といいます。本来彼らは、資産1億円以上の資産家をメインターゲットにして事業を展開していますが、高齢化や人口減少に伴い、純金融資産が5,000万円超から1億円未満の「マス富裕層」にも着目し始めました。彼らが顧客にすすめる節税方法とは、一体何でしょうか? 岸田康雄公認会計士/税理士が解説します。

1:マス富裕層の「節税策」は定形化されている

マス富裕層は、富裕層や超富裕層に比べて、「定型化した手法」で適切な節税策を見いだすことができる。職業や財務ステージで正しく類型化することができれば、共通のニーズや課題が見えてくるため、それらに対応した定形ソリューションをパッケージ化することができるだろう。

現在、マス富裕層に最適なソリューションは、リバースモーゲージ、生命保険、子供ヘの暦年贈与資金による子供名義での口座開設の3つである。これらによって預り資産を増やすことを目標とし、新規開拓営業を推進する。

2:プライベートバンカーの「組織的な営業戦略」

マス富裕層を囲い込むには、次のステップで営業を組織的に行うことが有効である。

【第1ステップ】顧客データベースの構築

短期間で成果を上げるには、まず既存顧客が多い職種に特化し、彼らの属する業界団体と連携してセミナーの共同開催を企画する。彼らが資産保全期ならば、地価が高い地域に住み、5,000万円以上の預金残高を持つ70歳から79歳までのマス富裕層を対象として「相続税セミナー」を開催する。その際、リバースモーゲージ、非課税枠を活用するための一時払い終身保険、子供や孫への暦年贈与の3点セットを用いた相続税対策コンサルティングを説明するのである。

【第2ステップ】顧客囲い込みのための外部組織との提携

当初は既存顧客を中心に営業活動を行うが、その後は新規顧客開拓のために外部組織との提携戦略を展開していく。主な提携先候補は以下のとおりである。

●職業団体

●公務員・教職員組合

●医師会・歯科医師会

●弁護士会・公認会計士協会・税理士会

●各種中小企業経営者団体

●会計事務所

マス富裕層のほとんどは所得税の確定申告を行っている。そこで、会計事務所と連携してセミナーを共同開催する。

また、人材紹介会社との提携も有効である。特に、エグゼクティブサーチ会社と呼ばれる人材紹介会社は、首都圏の外資系企業に勤めるインカムリッチ・プロフェッショナルを掴んでいる場合が多い。彼らと連携してインカムリッチ・プロフェッショナル向けに節税型の報酬プログラムの提案を行ったり、所得税対策セミナーを開催したりすることは、顧客データベースの構築に有効である。

さらに、保険代理店との提携も有効である。特に、地方都市で圧倒的なシェアを持つ独立系の保険代理店は、節税目的の生命保険に加入するマス富裕層の経営者を一番多く掴んでいる。地域金融機関が、これらの顧客に対して、融資や資産運用といった分野で保険代理店を支援する補完的役割を担うパートナーに徹すれば、業務提携は成功するであろう。

【第3ステップ】データベースや提携先と連動したセミナーの実施

セミナーの内容については、金融機関が売り込みたいサービスや金融商品だけでなく、ターゲットが共通に課題と感じているテーマを取り上げることが望ましいだろう。今ならば「相続税セミナー」である。その際、セミナーのテーマや講師を選ぶ主催者のセンスを通して付き合うべき金融機関であるかどうかをマス富裕層が判断していることを忘れてはならない。

ただし、セミナー開催は、ニーズ換起には効果を発揮するものであるが、取引実行に至るまでの効果はないという事実は知っておかなければならない。それゆえ、セミナー終了後1週間以内に、セミナーに参加したマス富裕層との個別面談を実施することが不可欠である。セミナー会場でのアンケート調査に基づいて訪問するのである。決してセミナーだけで終わってはならない。個別面談の場で用いるトーク集もあらかじめテンプレート化しておけば、経験の乏しいプライベートバンカーでも成果を上げることができ、営業活動が効率化されることだろう。

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

岸田 康雄

最終更新:10/11(金) 7:00
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