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モモコグミカンパニーの居残り人生教室「今泉監督と語ったBiSHの話と映画作りの話」

10/11(金) 12:00配信

Rolling Stone Japan

監督の下積み時代について

ー話は変わるんですが、監督の下積み時代ってどんな感じだったんですか?

今泉:お金だけの話で言うと、監督業だけで食べられるようになったのは去年くらいです。『カメラを止めるな!』を作ったENBUゼミナールっていう専門学校があって、事務員として働いてたんですよ。授業のスケジュールを組んだり、講師を決めたり。そこにいながら自主映画を作りつつ、自分もいろんな授業に潜り込んで、好きな監督や演出家がどうやって芝居をつけるのか勉強してました。監督って特殊な仕事なんですよ。俳優やアイドルもそうかもしれないけど、何か資格があるわけじゃないので。映画一本撮ったら誰でも監督になれるし。自分は助監督は一切やってなかったので、そういう意味ではずっと監督ですね。学生時代とか、持ちつ持たれつで誰かが監督する時に助監督を手伝ったりすることもあるんですけど、自分は助監督の能力が無さすぎてぜんぜん使えない。たぶん他人の映画に興味がないというか、友達の映画を面白いと思えないんですよね。で、面白いと思ってないヤツが現場にいるのってマイナスでしかないから。

ーなるほど。

今泉:持ちつ持たれつでお互いやってるのに、僕がそんな態度だったら「じゃあ今泉のは手伝わないから」ってなってもおかしくないじゃないですか。だから手伝ってもらうためには面白い映画を撮るしかなくて、そしたら「あいつの映画は面白いから手伝いたい」ってなる。それだけでなんとかやってましたね。お金がないとか人手が足りないとか、どんなに難しい状況でも面白いものを作るっていうのは大事だと思っていて。でも今になって思うけど、周りの人には恵まれてました。みんな手伝ってくれたし。

ー人柄なんですかね?

今泉:話は変わりますが、自主映画を作ってる時、仲間のスタッフとかキャストとか、みんな一緒にはプロになれないなって気づいたタイミングがあって。メインどころの役者と監督はプロになれるけど、それ以外は難しいかもって思った時に、自主映画でもギャラはしっかり払おうと決めて、それからは大したことない金額でも絶対に払ってました。ノーギャラで手伝ってもらって、そのまま自分だけプロになるみたいなのが一番嫌だと思ったんです。もちろん、その時の仲間で今はプロになってる人たちもいっぱいいるんですけど。

ーお客さん側から見えるものって、俳優さんと監督さん、あとは原作者くらいですよね。

今泉:映画に携わってる人はめちゃくちゃいるのにね。今はそういう類の話ってたくさんありますよ。チラシにスタッフの名前が載ってないとか、監督の名前ですらすごく小さい文字とか。日本の場合、映画監督の名前でお客さんが映画を観ることって少ないだろうし、そもそも監督の名前を聞いても誰か分からない人って多いと思う。それは普通の感覚だと思うし、でも自分は監督の名前で劇場にお客さんを呼べる人になりたいです。難しいことかもしれないけど。モモコさんは好きな映画って何ですか?

ー映画についてそんなに詳しいわけじゃないけど、私は矢口史靖監督がすごく好きです。『ひみつの花園』(1997年)とか『ウォーターボーイズ』(2001年)も好きだし、『スウィングガールズ』(2004年)とか。

今泉:映画学校に矢口さんがいらっしゃった時、授業で話していたのは、お客さんが押してほしいツボは全部押して、さらに他に気持ちいいツボも押すんですと。求められてることを「肩透かし」にするんじゃなく、みんなが求めてることはきっちりやって、その上でお客さんが思ってもないことをやれるといいという話をしていて、すごく勉強になりました。

ー矢口監督の作品はコメディっぽいのに、日常のなんでもないことがちゃんと映画になってるのが私は好きで。『愛がなんだ』でもそういう部分をすごく感じました。私は日常にないものがたくさん出てくる映画が苦手で、例えば拳銃とか。

今泉:北野武の映画ってヤクザが出てくるのが多いんですけど、日本で拳銃を出すならヤクザが一番リアリティがあるみたいなことらしいです。拳銃って適当に出せないじゃないですか。難しいですよね。そういう点で今泉批判もあるんですよ。映画っていろんなことができるのに、なんでこんな日常のことをわざわざ映画にするんだとか。

ー私はそこがいいなって思っていて、『愛がなんだ』でも動物園のシーンとかめっちゃ好きで、テルコさんが泣いちゃうところもすごく共感できて。

今泉:あそこで共感できるのだいぶヤバいですよ。あれ逆ですもんね、ってみんなに言われた。ナレーションでは説明してるけど、普通は悲しい側からの泣きに見えるらしい。まさか幸せからの泣きだとは思わない。どうやっても説明できないと思ったから原作の角田光代さんの言葉を使いましたけど。

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最終更新:10/11(金) 12:00
Rolling Stone Japan

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