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「関西電力被害者論」の論理破綻と、それらを喧伝する人々による人権侵害の悪辣さ

10/11(金) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

またぞろ飛び交い始めた「関西電力被害者論」

 前回、関西電力資金還流事件について高浜発電所における異常な過剰投資、投資回収が不可能と言うほかない無謀な投資について論じました。

⇒【画像】関電被害者論の根拠文献とされた「前衛」掲載の論文

 2回目は、美浜発電所における同様な異常性を論ずる予定でしたが、第一回を校了した後に、元助役の関連会社が稲田朋美代議士(自民党・福井一区)や高木毅代議士(自民党・福井二区)と資金的、人的に密接な関係があることが報じられる*とほぼ同時に、「関西電力被害者論」がSNSやブログ等で大量に流布されるようになりました。
<* 関電に金品の元助役株主の会社、稲田氏側に36万円寄付2019/10/04 朝日新聞、関電3億2千万円“裏金” 元助役の関連会社が稲田朋美元防衛相ら自民党議員に献金 後援会長も2019/10/03週刊朝日>

 これらの「発信源」の中には、大規模にポータルサイトやニュースアプリに配信しているものもあり、ほぼ一年前に私に対して誹謗中傷を行い、徹底的に「かみくだく」逆襲を受けて逃げ去ったものを掲載したサイトもあります。この手の人たちや組織は、嘘や誹謗中傷を流布し、放置して逃げること、即ちマーキングが目的ですので、事実がどうであるかはどうでも良いという連中です。

 これは「森友問題」が安倍晋三氏、大阪維新に及ぶと流布された「安倍被害者論」と酷似しており、しかも「森友問題」では全くの事実無根のでたらめで「陰謀論」の類いでした。

 政治業者や財界人が苦しくなると現れる「◎◎被害者論」、今回はいかなるものでしょうか。

悪辣な人権侵害とともに語られる「関西電力被害者論」

 今回現れた「高浜発電所資金還流事件関西電力被害者論」をここでは「関西電力被害者論」と呼称します。今回の事件で、関電幹部への資金還流を行った故森山榮治氏は、高浜町の助役を長年勤めており、高浜発電所の建設・増設、プルサーマルなどの実現に絶大な貢献があり、関西電力では、「それ*から頭が上がらない恩人だ」など、関西電力原子力事業の大恩人という扱いをしてきました。また森山氏が高浜町取締役を退職した1987年から2018年の間、関電100%出資グループ企業である関電プラント(関電興業)の非常勤顧問でした。関電プラントは、関電グループ中堅の子会社で送配電設備の土木・建築事業を担当していましたが、2004年からは各発電所のメンテナンスを担当しています。
<*1985年高浜3,4号炉運開を指す。/参照記事”影響40年 恩人の呪縛 原発旗振り役から「リスク」に 関電金品受領2019/10/03東京新聞”>

 NHK福井放送局が報じるところ*によると、福井県内では森山氏と関西電力の蜜月関係は常識であり、自民党福井県議である田中宏典氏(高浜町) によれば「原発を誘致するころから色々な関わりがあった人で、行政職員として原子力政策に貢献してきた。今ほど原発に対する風当たりが厳しい時代ではなかったが、立地をめぐって住民からの要望も多く苦労したと思う」と言うことです。

 同じくNHK福井の報じるところでは、福井県議会議長、副議長を歴任した自民党福井県議である石川与三吉氏(敦賀市) によれば、「『関西電力は森山元助役のおかげで大きくなった』というぐらいのことは言っても良いと思う。根性が通った人で、関西電力は森山氏の前を通らずにいられなかったと思う」とのことです。
<* 高浜町元助役 森山栄治氏とは2019/09/27 NHK福井県 (リンク切れ/WEBアーカイブ)>

 これらは、原子力発電所の立地、運転に関心を持つ人間にとっては、全くの常識である、立地自治体の有力者と原子力電力事業体の典型的な属人的関係と言えます。

 さて既述のように関電資金還流疑惑が自民党国会議員にまで及んだ頃からSNSやブログに毛が生えたような類のサイト等で実名、匿名を問わず大量に流布されている「関電被害者論」ですが、著名ブログからアングラブログ、安倍自公政権支持者(ネトサポ)の匿名ブログなど原典価値の無いものが大部分です。

 巷にあふれる「関西電力被害者論」の基本論旨は、次のようなものです。

1)森山氏は「地域の最有力者」であり利権者であった
2)故に関西電力は森山氏の利権を拒絶できなかった
3)関西電力経営陣、社員は森山氏に頭が上がらなかった
4)森山氏が関電経営陣、社員に数億円を贈与した行為は、森山氏の利権である
5)関電無罪(関電は被害者)

 またこれらの理屈を裏付けるものと称して次のような根拠が例示されました。

a)高浜発電所立地においてある部落(集落のこと)が立ち退きになりそれが、森山氏の利権の源であった
b)森山氏の居住する集落(または関係する集落)が、高浜発電所への主要道路にあり、森山氏にたてつけば交通遮断された

 膨大に流布される関電被害者論怪情報の論旨は、これらに集約されると思われます。

 まず基本論旨1)から5)ですが、このなかの3)から4)の間に典型的な論理飛躍があります。私にはどう考えても仮に森山氏が関電に対して圧倒的な優位に立てる「利権」があったとしても、それによって一地方の名士(地域ボス)が億単位の金品を長年関電幹部に贈与する理由になりません。

 そして、それらの根拠としてしめされたa)とb)については、高浜発電所の立地の経緯と建設から運開、増設と今までに至る経緯を調べればすべて誤りだと分かりますが、これらについては日を改めて解説します。

 利権とは、裏付けのないお金や便宜が利権者に大規模に流れるものであって、利権者が億単位のお金を配って回るものではありません。この論理「関電被害者論」では、まるでパシリ中学生が焼きそばパンを自分のお金で買って配って回るのを「パシリの利権」と称する行為となり、論理が完全に逆転し破綻しています。

 この完全に倒立してしまっている理屈になっていない理屈を正当化するとして決まって持ち出されてきたのが「森山氏が部落解放同盟(解放同盟)の地域幹部であり、森山氏から関西電力経営者、社員への億単位に上る資金贈与は同和利権である」というものです。

 あろうことかこのような粗雑な論に、エエ歳こいた大学教員、ジャーナリスト、メディア人士、政治業者が飛びつきました。曰く、「関電は同和の被害者」、「関電問題は同和がらみ」というものです。

 これは論理が転倒している以前に、きわめて典型的且つ悪質な人権侵害であり、差別です。しかも彼らは、自らの完全に矛盾し、破綻している「関電被害者論」を裏付けるためにこのような人権侵害を衆人環視のもとで行っています。絶対に許されないことです。

 繰り返しますが「関電被害者論」は、きわめて重大な差別言論の上に成り立っています。きわめて悪辣であり、絶対に許されないことです。私は彼らを渾身の怒りを込めて「差別主義者」と糾弾します。

 そしてここで、部落解放同盟中央本部が2019/10/07付けで発表した声明とえせ同和行為への声明をご紹介します。(サイトへの掲載はおそらく2019/10/08と思われる)

◆福井県高浜町元助役から関西電力幹部への金品受領問題に関する部落解放同盟中央本部のコメント 部落解放同盟中央本部
◆「えせ同和」行為の排除に向けて 部落解放同盟中央本部1998/08/24

 この「関電被害者論」への反論は、慎重に行わなければ二次加害になる可能性があり、きわめて慎重に行わねばなりません。著者は、この一週間、蔓延る嘘と差別言論への反論を幾度も幾度も書いては書き直しの連続でしたが、部落解放同盟からの声明がなければきわめて難しいものでたいへんに苦悩してきました。

 今回の部落解放同盟中央本部の声明発表については、その勇気と使命感を賞賛します。

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最終更新:10/11(金) 11:42
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