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テレンス・コンランのリノベーション計画──21世紀に向けた荘園領主館へ【前編】

10/12(土) 9:40配信

GQ JAPAN

インテリアショップからレストランに至るまで数多の業界の小売りやコーディネートに革命をもたらしてきたデザイン界の巨匠テレンス・コンラン卿がいま、イギリスのカントリーサイドにある私邸を21世紀向けにアップデートしようと意欲を燃やしている。英版『Vanity Fair』が密着取材した。

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87歳の巨匠

イギリスのカントリーサイドにある別邸バートン・コートでのテレンス・コンラン卿の毎朝の日課は、1964年にフィンランド人デザイナーのウルヨ・クッカプロが発表したカルセリ・ラウンジチェアという宇宙飛行士の座席のような椅子にどっしりと腰を沈め、朝いちばんのコーヒーと、最初の葉巻の1本とともに、デザインの下絵を描いて時を過ごすことだ。そうしていると、「とてもリラックスした気分になれるのですよ」と、御年87歳のデザイン界の巨匠は語る。

世界一快適な椅子と呼ばれるカルセリ・チェアがコンラン卿にとっていっそう居心地のよい場所になっている理由には、エレガントな柱脚を下に据えることで座面を数インチ高くしていることにもある。このようなちょっとした改造は、1950年代にテキスタイル産業のデザイナーとして世に出たときから、テレンス・コンランのデザイン手法の根底にあるものだ。彼はラップトップコンピューターよりはラップデスクという膝にのせる小テーブルを好んで使いつづけ、2Bのペンシルで紙に下絵を描く習慣を頑なに守っている。

それにしても、70年近くに及ぶ職業人生で、いったいどれだけのことを彼は成し遂げてきたのだろうか? デザイナー、レストラン経営者、実業家、作家など、ジャンルをまたいで鋭い審美眼を発揮してきたキャリアは、1964年にインテリアショップ「ハビタ(Habitat)」チェーンの1号店をロンドンにオープンしたときに始まるのだが、60年代という時代に革命的な影響を及ばしたという点で、その功績はビートルズやマリー・クヮント、ヴィダル・サスーンにも並び立つものだ。コンランは、ハビタの事業展開を通じて戦後イギリス社会にはびこるクモの巣をすっかり吹き払い、19世紀にデパートメントストアが行ったような小売り業態の改革を、みごとにやってのけた。彼はそのハビタと、1973年から展開するより高級志向な「ザ・コンラン・ショップ」の両輪でもって、上質なデザインを一般大衆の手の届くものとした。

とあるロンドンの午後、コンラン卿にザ・コンラン・ショップの旗艦店をみずから案内してもらった。そこは、1911年に開館したミシュラン・ハウスを改装したもので、装飾的なタイルが使われ、ステンドガラスには「ミシュランマン」の愛称で知られるビバンダムの姿が描かれている。

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最終更新:10/12(土) 9:40
GQ JAPAN

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