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僕らは夫婦じゃない…事実婚の夫が認知症で相続はどうなる?

10/12(土) 9:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

争いが絶えないことから「争族」と揶揄される「相続トラブル」。当事者にならないために、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、事実婚カップルに起きた相続トラブルについて、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

長年連れ添った夫が、突然認知症を発症したら…

認知症や交通事故、精神障害などにより、本人の判断能力が低下してしまうと、非常に多くの問題が発生します。今回は、そんな危機的な状況に陥った、あるカップルのお話です。

「いつも夫婦で仲いいですね」

ご近所の奥様に声をかけられて、「いえいえ」と返すAさん。毎日の日課である犬の散歩は、Bさんとふたりで行くのがお約束で、また近所の奥様と井戸端会議に花を咲かせるのも定番でした。話し込むAさんと近所の奥様の様子を、Bさんはいつも優しそうな表情を浮かべて見ています。

AさんとBさんには子供はいません。会社を経営していたBさんは、事業をそれなりに成功させ、いまではセミリタイヤ状態。閑静な高級住宅地に自宅を構え、ふたりで悠々自適な暮らしをしていました。

そんな二人には、ご近所も知らない秘密がありました。

ある日、二人の自宅を尋ねる一人の青年がいました。チャイムが鳴り、インターホン越しにAさんが出ると、ぶっきら棒な雰囲気で「なんだあんたか」と話す青年がいました。

「……何しにいらっしゃったのですか?」

「別に、父親の顔を見に来ただけど。いる?」

「いまはあいにく出かけていて……」

「そうか、あんたには用ないんで。じゃ」

そう青年は言うと帰ってきました。夕方、Bさんは帰宅。Aさんは青年が来たことを伝えました。

「また金でもせびりに来たんだろう。悪かったね、嫌な思いをさせて」

「いえ、そんなことはないわ。嫌われていて当然だし、わたし」

ご近所も知らない秘密。Bさんには前妻の間に子供がいたのです。前妻とは、子供が生まれしばらくしてから別居。よくある性格の不一致で、子供が生まれてからは、ますます喧嘩が絶えなくなり、Bさんが家を出ました。

はっきり言って、結婚生活は破綻していました。別居生活が1年ほど経ったころには、離婚協議がスタート。そんなときに、Aさんと出会い、しばらくして交際に発展しました。このことを察した前妻は、「不倫だ!」と騒ぎ立てました。そして十分すぎるくらいの慰謝料と、子供が20歳になるまでの養育費を払うことを条件に、離婚は成立しました。

さらにふたりには、もう1つ、秘密がありました。それは、二人は夫婦ではないのです。離婚協議中に、Bさんが「もう結婚なんてこりごり……」と愚痴を言っていたことを、Aさんは鮮明に覚えていました。

「別にカタチにこだわる必要なんて、ないわ」

そう思って、Bさんの離婚が成立しても、ふたりは籍を入れませんでした。Bさんの発したひと言から、Aさんのほうが及び腰になっていたのです。しかしふたりは籍を入れなくても、深い愛情で結ばれていることは、近所の評判を聞いても明らかでした。

それからしばらくしたころ、AさんはBさんとの会話のなかで、違和感を覚えました。その違和感は日に日に大きくなっていったのです。

「ねえ、近いうちに病院に行ってみよう」とAさん。

「えっ、なんで?」

「気づいていないかもしれないけど、最近のあなた、ちょっと変よ。物忘れがヒドイし……」

「俺が、認知症とでも?」

「念のためだから。ね、お願い」

Aさんは、何とか説得して、Bさんを病院に連れてきました。そして診断がくだされたのです。

――若年性アルツハイマー型認知症

ふたりは絶句するしかありませんでした。そしてBさんはある不安を口にしたのです。

「どうしよう、僕らは夫婦じゃない」

「……どういうこと?」

「戸籍上は他人だから、僕に何かあった時は、財産を君には残せない。遺産は、あいつ(前妻との子ども)と僕の兄弟で分けることになる」

――あなたが先に亡くなったら、私は無一文ということ?

なんでこうなる前に、もしもの時のことを考えて、行動しておかなかったのだろう。二人は悔やむしかありませんでした。

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最終更新:10/12(土) 9:00
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