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南極の棚氷が危ない、表と裏の「両面」から攻撃されている、研究

10/13(日) 7:20配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

南極大陸の「城壁」である棚氷は数々の脅威にさらされている

 南極大陸の氷床には、世界の海水面を約60m上昇させるだけの水が閉じ込められている。幸い、氷河が海に張り出してできる「棚氷」が、南極大陸を城壁のように囲み、内側にある陸の氷を守っている。ところが最近、この壁を上と下から破壊する現象が相次いで見つかった。

ギャラリー:南極の氷の下、水深70mの海で驚異の光景を見た 写真12点

 9月25日付けで学術誌『Scientific Reports』に発表された論文によると、寒冷なはずの東南極で、夏になると棚氷の表面が解け、何万個もの湖ができるという。これは、従来把握されていた数よりはるかに多い。

 さらに、10月9日付けで学術誌『Science Advances』に発表された論文によると、西南極では、海水が棚氷の底を「川」のように流れ、氷を解かしているという。

 地球温暖化が進行すれば、この2つのプロセスが、南極大陸の棚氷とその内側にある巨大な氷河の死を早めるおそれがある。

プロセス1:青い湖による侵略

 南極を覆う氷は、寒さがゆるむ夏になるとその表面が解け、くぼみに水が流れ込んで青い湖をつくる。融水湖だ。

 この美しい湖は、氷にとっては厄介者だ。湖は暗い色をしているため日光を吸収しやすく、氷や水をさらに温めてしまうからだ。条件によっては、湖底のクレバスに水が流れ込み、その水圧で棚氷を割ってしまうおそれがある。「水圧破砕」として知られる現象だ。

 科学者たちはこれまでグリーンランドや南極半島で、融水湖を徹底的に調べてきた。今回の研究チームは、南極大陸で最も寒く、最も安定した氷がある東南極で初めて系統的な調査を行った。

 論文の著者である英ダラム大学の氷河学者クリス・ストークス氏らの研究チームが2017年1月の衛星データを調べたところ、東南極の海岸線に沿って、なんと6万5000個以上もの湖や池が見つかった。「外縁部を調べると、あらゆるところに湖がありました。本当に驚きました」と、ストークス氏は語る。

 湖の数より心配だったのは、その分布だった。湖の多くが、棚氷が水圧破砕で崩壊しうる領域に集まっていたのだ。「私たちの予想よりはるかに、水圧破砕が起こりうる密度に近づいていました」とストークス氏。

 注意を要するのは、今回の研究で1回の融解シーズンのみであること、しかもそれは異例なシーズンだったことだ。2016年末から2017年初頭にかけて、温暖な天候と大気循環の異常によって、南極大陸の海岸線で海氷が激減していたのだ。

 ストークス氏らは、ほかの年の衛星データも分析しようと計画している。だが、たとえ2017年が例外だったとしても、今回の研究は、東南極の棚氷の一部が、予想以上に脆弱である可能性を示唆している。「気温が高くなっているので、暖かい年はもっと増えるでしょう」と、米コロラド大学ボルダー校の氷河学者アリソン・バンウェル氏は警告する。氏は今回の研究には参加していない。

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