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「シャンパンに合う台湾料理」の仕掛け人 日本橋「コレド室町テラス」で挑む

10/14(月) 7:47配信

NIKKEI STYLE

9月27日、東京・日本橋の商業施設「コレド室町テラス」に台北の人気レストラン「富錦樹台菜香檳(フージンツリー)」の海外初進出店がオープンした。同店は、台北市の松山空港近くの富錦街(フージンジエ)一帯にセレクトショップやカフェなどを運営する富錦樹グループが、2014年にオープンした新しいスタイルの台湾料理店。18年には台北市による「美食レストラン10選」に選ばれている。
「フージンツリー」の特徴は、スタイリッシュな空間で台湾料理とシャンパンを楽しむという、これまで台湾にはなかったコンセプトの店であること。富錦樹グループの創立者・呉羽傑(ジェイ・ウー)さんは、「それまでの台湾料理の店は、料理がおいしければいいという発想で、お酒は大抵昔ながらのビールとウイスキーのみ。30、40分で店を出るようなところも多く、ゆっくりと食事とお酒を楽しめるような店がなかった」と言う。

同店の発想の原点は、自身の体験にある。富錦樹グループは、日本の大手セレクトショップ、ビームスやユナイテッドアローズの台湾におけるパートナーになるなど海外との仕事が多く、取引先がひっきりなしに来台する。そうした中、「最初は屋台や昔ながらのお店にお連れして喜ばれていたのですが、何度も来台するうちに『もっとほかのお店はありませんか』と言われるようになった」そうだ。「そもそも、台湾では食事とお酒を飲む場所は別でした。そこで、庭もある居心地のよい空間で、ゆっくりと台湾料理とシャンパンを楽しんでもらえる店ならば、海外のお客様にも喜んでいただけると考えたのです」
料理に合わせる酒をシャンパンに、と考えたのにも理由がある。優しい味わいの料理から辛い火鍋まで、どんな料理にも合うからだ。「ワインを置く台湾料理の店は少なくなかったのですが、海鮮料理には白、肉料理には赤などと料理とのペアリングが複雑になる。店の料理と何が一番合うか、シンプルな提案ができないかと色々なお酒を試飲した結果、シャンパンにたどり着きました」(ウーさん)


シャンパンより価格が手ごろなスパークリングワインにも評価が高いものは多いが、あえてシャンパンと合わせたのにもワケが。「台湾人はコストパフォーマンスを重視する傾向があります。でも、僕は食事をする空間も含め『いいものにはお金がかかりますよ』という提案をしたかった。実家が食材輸入をしていたことから、小さい頃から同じ食材でもいいものと悪いものは値段が大きく違うことを学びました。だから、よく知らない人でも『高級だ』というしっかりしたイメージがあるシャンパンと合わせようと思ったんです」
「あんな店は、すぐ潰れるよ」
実は「フージンツリー」のオープン当初は、メディアも含め台湾の人々の反応は冷ややかだったという。台湾料理に値段の高いシャンパンを合わせるなんて、コストのバランスが悪すぎるというわけだ。

しかし、そんな声とは裏腹に、海外での仕事や留学経験がある人から人気に火が付き、駅から遠い立地であるにも関わらず目的客が訪れるようになった。「料理やお酒だけでなく、緑の多い店舗空間、ライティングや音楽とトータルで楽しめる店としたので海外のお客様にも喜んでいただけた。今年からは、『フージンツリー』のような新スタイルの台湾料理店が増えてきました」(ウーさん)
ウーさん自身は食の都と言われる南部・台南の出身だが、料理は台湾全土から「これぞ台湾料理」というものを選んだ。伝統料理をベースとした創作料理も置く。人気メニューの一つは、「水蓮菜と木の実の炒め」。シャキシャキとした食感の野菜と、梅干しに似た味の果肉を持つ木の実を合わせたもの。また、コシがある極細ビーフンを、シイタケや干しエビ、豚肉、キャベツなどと炒めた台南スタイルの「台湾ビーフン」も看板料理だ。

もともとは寒い季節限定の料理だった「北海道産干し貝柱とキヌガサダケ入り丸鶏のスープ」は、それ以外の季節にも食べたいというリクエストが多く、最近通年のメニューになった。北海道の干しホタテ貝柱をふんだんに使用した、濃厚な味わいのスープだ。


ラインアップには「ハエの頭」を意味する「蒼蠅頭(ツァンイントゥ)」という驚きの名前の料理も。花ニラと豚ひき肉を炒めたピリ辛味の台湾の定番料理。これに使われる調味料、豆鼓(トウチー)が黒くハエの頭に似ていることからこの料理名が付いたらしい。「フージンツリー」の「蒼蠅頭」にはピータンも使われていて、酒のつまみとして楽しめるほか、ご飯のお供にぴったり。いずれの料理も「コレド室町テラス」のメニューにも並ぶ。
台湾料理はこの1、2年、欧米でも注目を集め始めているという。今年6月には、米紙『ニューヨーク・タイムズ』に、新しい食の潮流として台湾料理を紹介する記事が掲載された。

「欧米ではこれまで台湾料理というジャンルがなく、中華料理と一緒にされていました。ところが、最近、ニューヨークにもおしゃれな台湾料理の店ができてきたのです。出店場所もチャイナタウンなどではなく、ブルックリンやイーストビレッジといった流行に敏感なエリアです。台湾で新しいスタイルの台湾料理店がはやってきていることに加え、世界中で人気の台湾発タピオカドリンクの影響もあるのでしょう」とウーさんは分析する。
彼自身、今後はニューヨーク、ロンドン、パリへと世界進出を視野に入れる。「台湾料理は優しい味わいで、受け入れられやすい。これからがすごく楽しみです」(ウーさん)

ウーさんが話してくれた台湾の「フージンツリー」の料理の中には、「臭豆腐(ツァウタウフー)」があった。夜市などでよく見かけるにおいの強烈な豆腐の料理で、地元の人に人気が高い。赤い韓国キムチとよく合わせるのだが、同店では昔から台湾で食べられてきた黄色いハクサイの漬物を用いた煮込み料理として出しているとのこと。
「赤いキムチだと味が濃くなりすぎますが、甘みもある黄色いキムチだと絶妙な味わいになるんです」(ウーさん)。臭豆腐は日本では好き嫌いが分かれるので「様子を見ながらメニューに加えるかも」と言う。オープニングのメニューにはなかったが、そのうち出合えるかもと、今後に期待だ。
(フリーライター メレンダ千春)

最終更新:10/14(月) 7:47
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