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「投手と強打者を同時に育てる」甲子園からバントが減ったワケ

10/15(火) 10:01配信

FRIDAY

先週、ドラフト会議に向けて提出されるプロ志望届が締め切られ、大学や高校などの各カテゴリーから全選手が発表されました。

2019年は高校生139選手、大学生107選手の計246選手が公示されましたが、魅力のある選手が多く非常に水準が高いです。年々、学生野球のレベルは向上していると思います。

特にこの夏、甲子園の地方予選から始まり、甲子園後のU18W杯までは好投手の活躍が多く報じられました。

例えば、奥川恭伸投手(星稜)は賢く完成度が高い投手ですね。佐々木朗希投手(大船渡)は急速だけではなく腕の振りが強いピッチャーなのでまだ大きなポテンシャルを秘めています。マウンドさばきや技術的な部分では西純矢投手(創志学園)も大投手の片鱗を見せてくれました。どの投手もプロに入って十分、やっていける能力を持っていると思います。

その一方で、個人的に感じたのは甲子園でもW杯でも打撃の質が変わってきたことです。分かりやすい例を挙げると、犠打が少なくなったことです。

正確に言えば犠打の使いどころというか、野球が強打主体に変わってきたことですかね。この夏の甲子園で優勝した履正社が象徴するように、近年は圧倒的なオフェンスを誇るチームが甲子園を沸かせているように感じます。

おそらく1試合あたりの犠打や犠飛は、緩やかに減っているはずです。初回に先頭打者が出塁したケースでバントのサインが出なかった場面も珍しくありませんでした。一時期の「ランナーが出たらとにかくバントでスコアリングポジションに送る」といった風潮は消えつつあります。

その意図としては、簡単に一つアウトを献上するより、右打ちをする。あるいは強く振ってバッテリーを警戒させ、バッティングカウントを作る。定石として「ここはバント」と決めつけるより、そういう思考を伴う打席が増えることで、冒頭のようなレベルアップが促されたのではないでしょうか。

おそらく、多くのチームでは金属バットの反発に頼らず、しっかり構えて強く振って遠くに飛ばす。そんな指導がされているのは日本の球界にとってポジティブなことでしょう。

もちろん、そのぶん凡退も増えます。特に三振する場面も多くなるでしょう。それをどう捉え、次の打席に活かせるかが、指導の分岐点になるかもしれません。

先日、中南米出身のあるスラッガーを取材させてもらったのですが、彼はメジャーを目指していた幼少期から指導者に「三振も野球の一部だ」と言われ続けていたと教えてくれました。空振りでもボールが見えていたか。それに合わせて強く振ることができたか。次の打席ではどうアジャストすればミートできるか。

そのように内容を精査すればアウトにも意味が出てきます。あるいは打った後より、三振後のほうが収穫は多いのかもしれません。これまではまずはバットに当てることがバッティングの優先順位でしたが、それすら覆りつつあります。

そして、そこから逆説的に考えると、大きく構えて強く振る打者が増えた今こそ、奥川投手や佐々木投手のピッチャーとしての資質が本物だと裏付けてくれます。スラッガーを育てれば好投手も増えてくる。このまま育成の好循環が続いて欲しいものです。いずれにしても10月17日に行われる今年のドラフトが楽しみです。



文:長谷川滋利
1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

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最終更新:11/15(金) 12:26
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