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“12-0”から8年。勃興するタジキスタンサッカーの正体

10/15(火) 12:52配信

footballista

10月15日、日本代表がアウェイの地で対戦するタジキスタン代表。日本と相まみえるのは2011年以来、実に8年ぶり。現在のFIFAランキングは115位でアジアの中で22番目にとどまっているが、一方で今月26日に開幕するU-17ワールドカップに2度目の出場を果たしている。果たして、タジキスタンサッカーの“実力”はいかほどなのか。

8年前の来日時にアテンド兼通訳としてタジキスタンチームに帯同し、現在も同国のサッカー関係者と交流を持つ篠崎直也さんに、謎多きタジキスタンとサッカー界の今を詳らかにしてもらった。

文 篠崎直也


 日本代表が前回タジキスタン代表と対戦したのはアルベルト・ザッケローニ監督時代の8年前、ブラジルW杯アジア3次予選だった。この時はシリアが2次予選で無資格選手を出場させて失格処分となり、その対戦相手だったタジキスタンが繰り上がりで参戦していた。

 思いがけない形でアジア王者への挑戦権を手にしたタジキスタンだったが、準備不足もあって大阪・長居スタジアムでのアウェイ戦は8-0、首都ドゥシャンベでは0-4といずれも大差で敗れ、その実力差をまざまざと見せつけられる結果に。当時代表を率いたアリムジョン・ラフィコフ監督は「今回はあくまでも勉強」「クリーンなプレーを心がけた。日本の選手にケガをさせたら申し訳ない」といったコメントを残し、その謙虚で誠実な姿勢が話題にもなった。

 当時の日本はグループ内で2敗を喫するなど決して好調とは言えなかったが、それでも2戦合計12-0で敗れたタジキスタンにとっては雲の上の存在だった。同国サッカー協会のファリドゥン・サリエフ広報担当は「あの頃と変わらず日本はアジアのナンバー1。その成長ぶりは尊敬するし、組織の規模は巨大だ。彼らの予算は我われの100倍以上なのだから」と日本との環境の違いを強調した。

大統領がサッカーに注力

 中央アジアに位置するタジキスタンは旧ソ連諸国の中で最も貧しい国である。国土の9割が山岳地帯のため移動が困難で、同地域のカザフスタンやウズベキスタンのように豊富な地下資源を有する訳でもなく、際立った産業がない。さらにソ連崩壊直後から権力争いにより内戦が勃発。1997年に和平合意を迎える頃には国は疲弊し切っていて、この間サッカー界でも多くの人材が国外に流出し、代表チームは資金不足により国際大会への参加すら叶わなかった。

 経済状態はその後も安定はしていない。8年前の来日時に筆者はタジキスタン代表チームに同行する機会を得たが、その暮らしぶりは質素だった。プロサッカー選手の月給は国民の平均とさほど変わらない約400ドル(約4万3200円)、トップ選手であっても3000ドル(約32万4000円)ほどだという。それは現在も同様だ。1日だけショッピングモールに出かけた日があったが何かを買う訳でもなく歩き回るだけで、「ホテルのガウンを持ち帰ったら罪になるのか?」と冗談とも本気とも取れる眼差しで聞かれたことが印象に残っている。

 他の中央アジア諸国の例に漏れず、タジキスタンもまた1994年から25年にわたって国の舵取りを担うエモマリ・ラフモン大統領の強大な権力体制が続く。混沌とした国内情勢を取り仕切るその手腕は国民の支持を得ているが、一方で「結婚式、誕生日、卒業式などを派手に祝ってはいけない。倹約生活を」「民族衣装を着るべし」「髭は伸ばすな」といった独特な禁止令の数々が存在する。伝統的に格闘技が盛んなお国柄だが、正式なライセンスを持たない指導者たちが闇雲に喧嘩の方法を教え、過激派組織の温床になるとしてボクシングや総合格闘技は表向きには禁止。その代わりに「子供たちを育成する健全なスポーツ」として大統領が注力しているのがサッカーという訳だ。国の指導者の意向によって劇的に環境が変わるのは長所とも言えるだろう。

 日本に惨敗を喫した翌年の2012年1月、かつてサッカー選手だった経歴を持つ大統領の長男エモマリ・ルスタムが25歳の若さでタジキスタンサッカー協会会長に就任すると、大規模な改革が始まった。8年前の来日時に1人だけカジュアルな服装で、やたらと羽振りの良い若者がチームに帯同していたが、その人物こそがルスタムだった。当時のタジキスタンにとって遠征の最大の収穫は、彼が日本のサッカー環境を目の当たりにしたことだったのかもしれない。現在はドゥシャンベ市長も務めており、次期大統領就任が確実視されている大物政治家としての顔も持つルスタム会長は「国の未来は子供たちにある」とスローガンを掲げ、国内各地のインフラ整備を実施。サッカー放送局の開設や、国外からのコーチ招へいなども進み、上流階級だけではなく貧困層の子供たちにもチャンスが広がった。

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最終更新:10/15(火) 13:47
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