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論説コラムーオシャレにお店の「食品ロス」をレスキュー

10/15(火) 9:01配信

オルタナ

いまやSDGs(持続可能な開発目標)の大ブーム。気候変動や海洋プラスチックごみと並んで注目されているのが、ゴール12「持続可能な生産、消費形態を確保する」である。2030年までに小売・消費レベルにおける1人当たりの食料廃棄を半減させ、収穫後損失など生産・サプライチェーンにおける食料損失を減少させることが求められているのだ。

食品ロスはどれほど深刻か。フードロスは合計で1,661万t。生産から流通、消費のプロセスをみると、食べられなくて加工の過程で除去される骨、皮なども多く、これを除く本当の意味の食べられるのに捨てられているフードロスは621万tとなる。

このうち何と家庭が半分ちかい282万tもある。一方、食品事業者関係はというと339万tとやはりこちらも多い。ゴミ、貧困、CO2の問題ともからむだけに放置はできない。2019年5月には食品ロスの削減を総合的に推進する食品ロス削減推進法が成立したほどだ。

家庭の食品ロスは、まとめ買いでもするのか、未開封や手つかず食品を平気で廃棄する人が多いのが原因というから驚く。こちらはわれわれの努力で何とかなるかもしれない。逆に食品事業者関係は賞味期限の表示などが論議の対象とあって個人の手の届かない領域のような気もするが、必ずしもそうではないようだ。

Co Cookingの川越一麿社長が注目したのが中食、外食のフードロスだ。お客さんの手前、店内の棚を空にするわけにはいかないとか、レストランでの予約のドタキャン、バイキングの食べ残しなど様々な事情で余ってしまった食品、あるいは、間違いなく残りそうなもの、それを安価で求めている食べ手と結ぶ「TABETE」というソーシャル・ビジネスを2018年4月から日本で展開している。

実はこれ、デンマークのToo Good To Goを参考に考え出した仕組みだという。欧州では先駆的に始まっているのだが、実は米国でもアジアでも同様の試みが広がっている。日本はむしろ立ち遅れているのである。フォーラムで、SDGsだ、食品ロスだと、難しい顔をして目を吊り上げて議論するばかりが能じゃない。廃棄されそうな食べ物をテイクアウトすることによって、おしゃれで、気軽に参加できる食品ロス防止策、あなたもやってみませんか。

お店の「食べてー」のお願いを、食べたい「食べ手」につなぐ、この仕組みは簡単だ。事前に会員登録をしてインターネットのTABETEのアプリを開くと、パン屋さん、焼き肉店、割烹、カレー、イタリアン、カフェなどがテイクアウトしてほしい食べ物が店ごとに付随情報とともに表示してある。

例えばこんな具合だ。
・〇〇パン
・駅から徒歩5分
・引き取り時間16:00~18:30
・定価1000円→600円

お店をタップするとテイクアウト希望の食べ物の写真、お店の住所、地図も掲載されているから便利だ。気に入ったら引き取り時間と個数を入力し、クレジットカードで料金決済して、後は品物を取りに行くだけだ。一個売れるごとにCo Cookingに手数料が入る。

現在、TABETEは東京23区内、さいたま市、横浜市で300店舗と契約、食べ手の登録会員は16万人に達している。年齢別で見ると20-30歳から40代後半にかけてが中心と比較的若く、女性が7割近い。値付けは店側に任せているが通常2-3割引きとあって価格面でのメリットは好評だが、「(地球や社会のために)いいことしたいから」というSDGsを念頭に置いたTABETEファンが多いのが特徴だ。

ただし、課題もある。
1.客がテイクアウトのため店まで取りにいく仕組みなので場所的な制約がある。自宅や職場に近ければいいが、そうでないと売れにくい
2.ランチの時間帯とずれるなど食べ手のニーズとライムラグが生じる場合がある。ランチの残りは夕食の早い時間に売るなどの工夫が必要となる
3.商品力に差がある。人気の食品は遠くからでも買いに来るが、そうでない場合、近くても売れない--などが指摘されている。

こうした仕組みは世界にどんどん広がっており、Co Cookingとしては、TABETEを今後、全国に広げていく方針で、まずは金沢市(石川県)に進出する。食品廃棄物はゴミになると燃やすコストも高いとあってフードロス問題に熱心な自治体も多いが、金沢市もそのひとつで、金沢市当局からCo Cookingへ働きかけがあったのだという。地方の場合、多少、距離があっても車利用が定着しておりテイクアウトしやすい環境にある。富士吉田市、浜松市(いずれも静岡県)も候補に挙がっているという。

川越社長は「TABETEをよりよく利用してもらうためにポイント制の導入など改善の余地はまだあると考えているが、この仕組みはおいしいものを安価で購入できるのは確かだが、あくまで基本はフードロス防止。食べ手は、食品や料理があまって困っているお店を助けるレスキューする人という意識を持ってもらえたらと思う」と話している。(完)


原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

原田勝広

最終更新:10/15(火) 9:01
オルタナ

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