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若手棋士の勝負服 白瀧呉服店、タイトル戦を陰で演出

10/15(火) 18:05配信

NIKKEI STYLE

■名人戦にファッション革命「藤色グラデーション」

 「昔のタイトル戦と現在では、和服の接し方が大きく違っている」と佐太郎店主。確かに和服が普段着だった世代は着慣れていて、よく言えばおおらか、他方でラフな一面があったようだ。1950~60年代のタイトル戦の写真では、鬼才をうたわれた升田幸三・実力制第四代名人の襟元からはキャメルの肌着(高級品だったそうだ)がのぞいていたりする。呉服業界から「第22代着物博士」を贈られた大山康晴・十五世名人も、時には帯を無造作に締めていたことがあったという。どこから見られても欠点の無いように意識し始めたのは、ここ40年ほどだろう。渡辺氏は、将棋界で常に10歳以上の年長者に囲まれてきた。実年齢よりも上に見せるために、渋好みになったのかもしれない。

 さらに「見られる」から「見せる」へ一歩進めたのが佐藤天彦九段だ。特に2016~19年の名人戦は白地に藤色(なす紺)をグラデーションに染めた羽織やアザラシ模様など見たことのない特注で工夫を凝らし、最も古い伝統を持つ名人戦にファッション革命をもたらした。参謀役となったのが佐太郎店主だ。「最初は先輩に敬意を表して同じように着るが、2局目からは自分のカラーを出したい、というのが佐藤九段の考え」だったという。

 佐太郎氏は「店にある生地を全て見せてほしいと言われ、『こんな事ができないか』といった提案をいくつも受けた」と、佐藤氏の知識の豊富さに舌を巻く。逆に佐太郎店主のアイデアを実現したのが名人戦の「藤色グラデーション」だったという。2人で問屋を見て回り5時間かけて生地を決めたこともある。「趣味のファッションを起点に人生のサイクルをプラスの方向へ持って行く」が佐藤氏の持論だ。最近は「天彦革命」の流れをくむ若手の後輩が、次々とタイトル戦に登場している。

 イケメン棋士の代表格である中村太地七段は約180センチの長身。佐太郎店主はブルー地にストライプの羽織や細やかな市松柄の着物を薦めた。「若々しさを前面に出して、次代の旗手となる者がベテランに挑むという図式に見えるようにと考えた」という。中村氏は将棋を指すのではなく、見て楽しむファン層の「観る将」の開拓に意欲を燃やすひとり。自らのファッション観は「清潔さを意識」だ。

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最終更新:10/15(火) 18:05
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