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米国と北朝鮮、非核化実務協議の決裂を招いた「食い違い」の深刻さ

10/15(火) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 10月5日、スウェーデンのストックホルムで再開した米朝実務協議だったが、北朝鮮側が「決裂」を表明、早くも暗雲が漂うことになった。

 「非核化」とその「対価」に対する米朝双方の綱引きのなかで、米国は北朝鮮の“戦略転換”を読めなかったようだ。

● 「決裂」を表明した北朝鮮 ハノイ会談の交渉戦略捨てる

 「米国は手ぶらでやってきた」。5日、7ヵ月ぶりに再会した米朝実務協議後、北朝鮮の金明吉(キム・ミョンギル)首席代表は声明を読み上げ、協議の決裂を宣言した。

 金氏は、米国に年末まで熟考するよう勧告したといい、平壌までの帰途の際、記者団に繰り返し、米国の不実をなじった。

 これに対し、米国務省の反応は異なっていた。「複数の新たな提案を行った」と説明。「8時間半の協議の内容や精神を反映していない」と反論した。

 どうして、こうした食い違いが起きたのか。

 「米国は、北朝鮮が米朝ハノイ会談をどのように総括したのか、十分に分析していなかったようだ」。長年、北朝鮮政策を担当した韓国の元政府高官はこう解説する。

 金正恩朝鮮労働党委員長は2月末にベトナム・ハノイで行った2回目の米朝首脳会談で、寧辺核関連施設の廃棄をする代わりに国連制裁の一部解除を求めた。

 だが、トランプ米大統領は、「寧辺+α」が必要だとして提案を拒み、会談は物別れに終わった。

 米韓などのメディアは、米側が今回、この「寧辺+α」を基礎にして北朝鮮に対価を与える案を準備していたと報じた。私も、韓国政府がこの案の別バージョンとして、対価を「開城工業団地と金剛山観光の再開」にする案を米側に打診したという話も聞いていた。

 米国の立場としては、「完全な非核化の後に制裁解除」という政治目標は捨てないものの、現実的な妥協案として、「解除ではなく、一時的な制裁猶予」という妥協策を準備していたようだ。

 だが、金明吉氏の発言や朝鮮中央通信の報道などを見ると、ストックホルムでの実務協議に臨んだ北朝鮮は、ハノイ会談での交渉戦略を完全に捨て去っていたといえそうだ。

● 「一方的な譲歩は失敗」 「対価」ない限り協議に応じず

 北朝鮮関係筋によれば、ハノイ会談後、何の成果を持たずに平壌に戻った北朝鮮代表団には、最高指導者の金正恩氏を除いて、労働党の幹部らから強い批判が浴びせられた。

 そのほとんどは、「なぜ、我々だけが譲歩して、何の対価も得られなかったのか」という点に集中したという。

 北朝鮮は昨春以降、豊渓里の核実験場廃棄や行方不明米兵の遺骨返還、抑留していた米市民の送還など、米国に対するカードを次々に切った。

 だが、彼らが期待した経済制裁の緩和はまったく実現していない。

 トランプ大統領は昨年6月のシンガポールでの初めての首脳会談の際、米韓合同軍事演習の中断を約束したが、昨年11月から米韓海兵隊合同軍事演習(KMEP)を再開したほか、今年8月には米韓合同指揮所演習も行われた。

 結局、北朝鮮が行ったハノイ会談に対する総括作業の結論は、「米国を信頼しすぎて、行動対行動の原則を忘れ、一方的に譲歩した結果が招いた外交上の失敗」というものだったようだ。

 この責任を取り、米朝協議を主導した労働党統一戦線部の金英哲党副委員長や金聖恵統一戦略室長、北朝鮮外務省の金赫哲対米特別代表らは対米交渉担当の任を解かれたという。

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最終更新:10/15(火) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

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