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スコットランド戦の「ありがとう」は街を、命を守ったスタジアムにも。

10/15(火) 20:31配信

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 何度も目にし、聞いてきた。

 歴史を作ろう! 

 簡単なことではないし、ほとんどの野望は未完のまま果てる。それでも、何年かに一度、あるいは何十年かに一度、歴史は作られる。かなわなかった夢をかなえ、届かなかった栄冠を手にするアスリートは、ごく稀に、しかし必ずや現れる。

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 スコットランドに勝った。ワールドカップの舞台で、ティア1のチームを2度破るティア2のチームに日本はなった。アジアで初めて、決勝トーナメントに進出するチームにもなった。

 歴史的、であることは間違いない。

歴史とは、当事者のものである。

 だが、この勝利を「歴史が作られた!」なんて言葉で片づける気にはなれない。何年かに一度、あるいは何十年かに一度、定期的に出現する事象と同じ言葉で括ってしまう気にはとてもなれない。

 歴史とは、あくまで当事者のものである。スペイン人にとって極めて重要な歴史である“レコンキスタ(再征服運動)”が日本人にとってあまり大きな意味を持たないように、自分たちにとってはかけがえのない物語が、第三者にはまるで知られていないという例は枚挙に暇がない。

 同じことは、スポーツについても当てはまる。

 ジョホールバルの勝利に狂喜していたわたしは、同じくフランス・ワールドカップに初出場を決めた南アフリカ代表の歓喜を知らなかった。視野の基準を自国ではなく世界に設定すれば、どちらの歓喜もあっさりとフィルターから振るい落とされる、よくある慶事にすぎなかったのだ。

スコットランドが、世界が、驚いた。

 2019年10月13日のラグビー日本代表がやってのけたことは違う。

 日本は大騒ぎになった。初めてフランス・ワールドカップに出場したときのように、初めてWBCで優勝したときのように、歓喜の渦に包まれた。テレビの視聴率はとてつもない数字を弾き出し、評論家が経済効果を語り始めた。

 だが、第1回WBCの優勝を逃したアメリカで国民が悲嘆の涙に暮れた、という話は聞かなかったが、今回、スコットランド人は掛け値なしに衝撃を受けている。彼らに油断はなかったし、試合への関心が低いわけでもなかった。全力で立ちはだかり、日本の行く手を阻もうとして、それでも、打ち砕かれた。

 驚いたのはスコットランド人だけではない。いつもならばライバルの失態を嘲笑するイングランド人も、当事者ではないフランス人も、アルゼンチン人も、ほとんど驚愕といってもいい反応を見せている。

 もし今後、日本のスポーツが同程度の衝撃を世界に与えようとするならば──。

 サッカーであれば、ブラジルやドイツを粉砕した上でのワールドカップ優勝か。

 バスケットボールの日本代表がNBAのスターで固めたアメリカ代表を破るか。

 それほどのことを、日本はやったのだ。

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最終更新:10/16(水) 22:56
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