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世界経済減速 「世紀の空売り」に学ぶ時(苦瓜達郎)

10/16(水) 7:47配信

NIKKEI STYLE

世界経済に不透明感が広がり今後の景気悪化リスクに懸念を持たれている方も多いでしょう。将来のリスクについて考えるには、過去の歴史を学ぶことが1つの有力な方法です。特に参考になる点が多いのは、最も新しい世界的経済危機であるリーマン・ショックでしょう。どういった行動があれだけの危機をもたらしたか――。今回はその点について私が最も納得できるストーリーだと感じた「世紀の空売り」を紹介したいと思います。

■「世紀の空売り」が描く異常な世界

既に読まれた方もいると思いますが、著者のマイケル・ルイスは米国の証券会社で債券の営業マンを務めた後、金融業界の実像を描いた「ライアーズ・ポーカー」でノンフィクション作家としてデビューした人物です。
その後、低予算ながらチーム編成の妙で米メジャーリーグの上位に食い込んだオークランド・アスレチックスを描いた「マネー・ボール」など様々な世界を舞台に作品を書きましたが、住宅ローンシステムの破綻という大事件を契機に再び金融業界に題材を求めるようになりました。そしてリーマン・ブラザーズの倒産から1年半後の2010年3月に発表したのが「世紀の空売り」です。
そこで描かれるのは、米国の住宅ローンを巡る金融システムの異常性に早くから気付き、ローンを証券化した商品の空売りを行い巨額の利益を上げた3組の機関投資家です。

当時、米国ではサブプライムローンと呼ばれる返済能力の低い顧客に対する貸し付けが急増しており、その効果で住宅価格が上昇、回りまわって個人消費も底上げされるというバブル状況にありました。
サブプライムローンの債権は複雑に組み合わせて証券化され「一斉に返済が滞るリスクは低く、滞った場合も担保の住宅を売却すれば貸付金の大半は回収できる」という理屈のもと、安全な金融商品として低い金利で販売されていました。主人公たちはその金利の一部を負担する代わりに、貸し倒れが一定レベル以上発生した場合に元本分の補償を受けるという契約を結び、システムの破綻に伴って大きな利益を上げたのです。

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最終更新:10/16(水) 7:47
NIKKEI STYLE

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