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是枝裕和監督、フランス二大女優出演の最新作『真実』について語る:日本語版吹替は宮本信子と宮崎あおい

10/16(水) 15:30配信

nippon.com

渡邊 玲子
松本 卓也(ニッポンドットコム)

是枝裕和監督の最新作『真実』は、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュというフランス二大女優が共演し、全編フランスで撮影した意欲作。監督初の外国語作品ということで、異例の日本語吹替版同時公開(10月11日)も実現した。ドヌーヴとビノシュの声をそれぞれ担当した二人の日本人女優は、この映画をどう見たのか、監督とともに話を聞いた。

映画『真実』の誕生まで

最新作の『真実』がベネチア国際映画祭のオープニングを飾るという、これまで日本人監督が誰も成し得なかった快挙をやってのけた是枝裕和監督。世界的に有名な俳優陣を起用し、フランスで撮影するという野心的な計画は、どうやって生まれ、どのように実現していったのだろう。

まず発端は2011年2月、かねて交流のあったジュリエット・ビノシュが来日した際、長い時間を共に過ごし、一緒に映画を作ろうと誓い合ったこと。そのとき、日本での撮影を想定していたビノシュの期待を裏切るかのように、監督の頭には「どうせ撮るのであれば、フランスのキャストとスタッフで、フランスで撮影したい」という強い思いが湧いたという。その後2015年秋に、監督がフランスから帰国する機内で、具体的なアイディアを思いついた。

老いた大女優が嘘だらけの自伝を出版する話で、その書名を映画のタイトルにする案が浮かぶ。そこには「真実」の二字も含まれており、すでにカトリーヌ・ドヌーヴを主役に、娘役にビノシュ、その夫役に米国人俳優のイーサン・ホークを配するところまで頭にあったというから、すべてはここを起点に動き出したと言っていい。

そこからは、構想の実現に向け、ビノシュ、次いでドヌーヴとコンタクトを取りながら、並行して物語をふくらませていく。主人公の人物像は、監督によるドヌーヴへの直接取材をヒントに肉付けしていった。あらかじめ打診しておいたホークには、『万引き家族』がパルムドールを受賞した直後、カンヌから直接ニューヨークに飛んで出演交渉したというから効果は絶大だったろう。

それ以外のキャストは、オーディションで決めていった。スタッフとキャストが固まってくる中、この映画にとってとりわけ重要なポイントがメインの撮影現場となる家だ。紆余曲折の末、高架区間を走るメトロが見える邸宅、パリ市内では珍しい庭付きという、大女優の住まいにふさわしい奇跡のロケーションが見つかった。その空間特有の味付けが脚本にも反映されたエピソードを監督が振り返る。

是枝 台本を書いてから、あの家に夜1人で泊まったんです。もし人に見られたら、ちょっとおかしな感じですけど、自分でセリフを言いながら歩き回ってみる。そうしたら、思った以上に広いんだよね、空間が。リビングから移動するときとか、台所から裏口に行く間に、このセリフじゃ足りないやとなって。そこでセリフを空間にアジャストしていく作業をしました。でも結果的にフランス語になると、またちょっと尺(長さ)が変わってくるから、微調整が必要になる。そこがすごく大事なので、時間をかけたところですね。一番面白かったし、難しかった。

このようにして、是枝監督念願の、フランスを舞台に、フランス人のキャストとスタッフで撮るお膳立てが整っていった。セリフもホークが関わる英語の部分を除いてすべてフランス語。それでもフランス映画にない要素といったら何か。それは脚本と監督が是枝裕和であることに尽きる。ドヌーヴとビノシュの共演という、それまでフランス人すらしなかった挑戦も含めてだ。しかし監督自身は、ことさらこれまでとの違いを意識せずに現場に入り込んだ。

是枝 あまり自分の色を出すっていう意識はなかった。出るものは出るだろうし、消えるものは消えるだろうと思っていました。フランス映画にしなくちゃっていう意識も当然ありませんし。それは日本で撮るとき、「日本映画にしなくちゃ」なんて思わないのと同じです。僕が意識したのは、日本の撮影現場で考えているのと同じことをちゃんとやろうと、そこまでですね。素晴らしい役者たちの魅力を、どういう風にアンサンブルを作って引き出していくか。あの家の魅力をどう生かすか。それだけでした。

『真実』の物語は、半世紀のフランス映画史と歩みを共にしてきた国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が、自伝を出版することになり、そのお祝いにニューヨークから娘一家がパリへと駆けつけるところから始まる。娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)はアメリカで脚本家として活躍し、その夫ハンク(イーサン・ホーク)はテレビドラマに出演する俳優。ハンクも娘のシャルロットもファビエンヌを訪ねるのは初めてだ。久々に会う母娘は、自伝に書かれた「嘘」をめぐり、昔からの葛藤を再燃させてゆく。母は新作の撮影を控えていて、かつてライバルだった女優サラの再来と呼ばれる新進女優マノン(マノン・クラヴェル)との共演に頭を悩ませる。サラはファビエンヌの親友でもあり、リュミールも慕っていたが、若くして不幸な死を遂げていた――。

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最終更新:10/16(水) 15:30
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