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『ジョーカー』をさらに読み解くための3つのキーワード【松崎健夫の映画ビジネス考】

10/16(水) 21:00配信

FINDERS

映画『ジョーカー』(19)が話題を呼んでいる。10月4日に世界12カ国で同時公開され、現在66カ国で週間興行収入ランキング初登場1位となる大ヒットを記録中。北米では4374館で上映されるという超拡大公開となり、3日間で約103億円もの興行収入を稼ぎ出しただけでなく、10月に封切りされた作品として歴代興行記録を塗り替えてもいる。日本でも10月8日までに約68万2000人を動員し、興行収入も10億円を突破。今や世界的な社会現象となっている。

この映画は、『バットマン』に登場する敵役・ジョーカーを主人公にした作品だが、この映画にアメコミの人気スーパーヒーローであるバットマンは登場しない。描かれるのは、ジョーカーと称する悪党になる以前の青年、そして、将来バットマンとなるであろう少年の姿。少年に至っては、単なる脇役に過ぎない。つまり『ジョーカー』は、近い未来、とんでもない悪党になる人物を主人公にした映画なのだ。

昨今、映画に対して“感動”や“共感”が求められがちだというきらいがある。主人公の境遇や内面に共感し、涙する。例えばこのことは、テレビのCMで、映画を観た観客が「泣けた」あるいは「涙が出た」などのコメントをする姿を採用していることにも象徴されている。そのコメントに“共感”する人々がいる一方で、辟易とする人たちもいる。“感動”や“共感”を押し付けるような宣伝の効果はいかがなものか?と疑問を抱いているのだ。その点で、『ジョーカー』は、本来であれば、“感動”や“共感”とは無縁のはず。何故ならば、彼は犯罪者となるような人間だからだ。

であるにも関わらず、『ジョーカー』は人々を魅了し、熱狂させている。そして同時に、「悪意を誘導させるような映画だ」と、大きな批判にも晒されている。特にアメリカ本国では、「近年の銃乱射事件に同調するような暴力を描いている」と、作品に対する否定的な論調も支持されている。実際、ロサンゼルスの映画館では、マスクの着用が禁止され、公開初日には「陸軍とロス市警が警備体制を強化する」とまで報道された。観客の感想をネットで検索すると、賛否があるものの、どちらかというと「賛」とする声の方が大きい印象を持つが、それでも多くの議論が飛び交っている。連載第16回目では、「『ジョーカー』が描く3つのキーワード」と題して、この映画に用いられているモチーフから見えてくるいくつかのテーマについて映画史的な視点から解説する。

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最終更新:10/16(水) 21:00
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