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尊敬する人にストーカーされたら......「同意」に潜むワナが女性を傷つける

10/16(水) 18:52配信

ニューズウィーク日本版

学問の場でストーカー被害を受け沈黙を強いられた

ドナ・フレイタスは教育での男女平等を保障したタイトルナイン(米教育改正法第9編)における「同意」について研究し、講演活動もしている。先頃出版された回想記『同意──望まざる注目の記憶』では、大学院時代に尊敬していた教授から嫌がらせとストーカー行為を受けた経緯を詳しく描いた。

そもそも「同意」とは何か。学生と教授、部下と上司の関係において、何をもって女性側の同意と見なすのか。こうした議論から逃げてはいけないと、フレイタスは訴える。

フレイタスを虐待した教授は神父でもあった。当初は教授が自分の仕事に注目してくれるのを光栄に感じたが、その後、関係は悪化していった。

対応から逃げる大学側

この「神父L」(今でも彼女は加害者の名前を明かしていない)からフレイタスが受けた虐待は、私的な空間に絶えず侵入するという精神的なものだった。教授は直接に性行為を求めたり、圧力をかけたりはしなかった。しかしフレイタスが博士号を取り、将来専門職として仕事をするには教授の支持が不可欠だったという。

当初は自分の不快感を認めるのが難しかったと、フレイタスは打ち明ける。教授の行動を、弟子に対する指導者の悪意なき関心の表れだと信じ、 正当化しようとしていたからだ。

だが性的な接近を思わせる教授の行動が執拗さを増すにつれ、その偏執的な性質を否定できなくなった。大学に苦情を申し立てたフレイタスは、教授がクビになると信じていた。

ところが大学側は、男女差別を禁じるタイトルナインに基づく法的措置の申し立てができる180日の期限が過ぎるまで逃げ回った。それでもフレイタスの弁護士は大学当局との合意を取り付け、フレイタスは神父Lと接触することなしに卒業することが可能になった。

神父Lはどうなったか? 教職を続けている。フレイタスは卒業後も専門家の会議で、神父を見掛けることがあった。彼女が教職をやめ、執筆と講演活動を中心にしたのは、神父の顔を見たくなかったからだ。

なぜ今になって回想記を発表したのか。フレイタスによれば「これ以上の沈黙は有害」と考えるからだ。以下は同書からの抜粋である。

私はこのことを話してはいけないことになっている。私が在籍していた大学院は、指導者の嫌がらせをやめさせ、わずかな金をくれた。私は引き換えに、これから伝えようとしていることが起こらなかったふりをすることに同意した。

私は全ての不正行為を免責することに同意した。永遠に沈黙することに同意した。自分が何をしようとしているのか、何に署名しようとしているのかを考える余裕はなかった。

当時の私が求めていたのはただ、この男、私の指導教官であるはずのこの男、大学院生活を通じて私を導き、将来のための指導を仰ぐつもりでいた男がいなくなることだった。

あの男から解放されるためならば、求められるままに何でも手渡そうと思った。

すると大学側は、私の「声」をよこせと言った。

だから私は声を与えた。大学の人事課で自分の舌を切り取り、係の女性に渡した。私は自分自身を切断した。出血にも気付かなかった。当時授業のために読んでいたフェミニストの理論によれば、女性が持つ最も重要なものを差し出した。

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最終更新:10/16(水) 18:52
ニューズウィーク日本版

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