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二子玉川地区の河川氾濫は人災か? 堤防建設問題を反対派と国交省に直撃《台風19号水害》

10/16(水) 5:30配信

文春オンライン

 台風19号の猛威により、10月12日午後10時過ぎ、多摩川が氾濫を起こし、溢れた川の水で世田谷区玉川周辺の住宅地が冠水。被害にあった住民は肩を落とす。

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「10年ぐらい前から堤防の工事が川下からスタートしていたのですが、ある日を境にピタリと工事が止まり、何年も土嚢が詰まれたままで放置されていました。あと100メートル堤防が伸びていれば、公園入り口もカバーできたのに」

テレビでも取り上げられた「二子玉川の新堤防論争」

 東急線二子玉川駅に隣接する橋を区切りに下流側の堤防は整備されているが、上流側は土嚢を重ねたのみの仮堤防だ。今回の氾濫箇所とされている玉川3丁目「兵庫島公園」の入り口付近の対策は脆弱で台風前日に世田谷区が集めた土嚢が数段詰まれたのみの状態だった。工事はなぜ止まったのか。

 この問題は、2009年8月に放送された情報番組「噂の東京マガジン」(TBS系)の人気コーナー「噂の現場」でも取り上げられた。当時の新聞ラテ欄には「集中豪雨・堤防建設で住民が反目」と書かれている。今回ネットで拡散されたブログには当時の番組内容がこう記されていた。

《二子玉川の新堤防で論争 2009/08/23放送
 東京・世田谷区の東急・二子玉川駅近くの南地区(約500世帯)で、国土交通省が建設を始めた新堤防をめぐって、住民同士が論争を繰り広げていることを放送。「住宅の中からの、すばらしいながめが高い堤防にさえぎられ、周辺の自然もなくなる。100年に一度の洪水に備えられるという説明納得できない」という建設反対派と、「水害から人命・財産を守るのには欠かせない」という賛成派の、それぞれの意見を紹介しました。》

反対は裁判所に却下され「下流側」堤防は完成した

 いまネット掲示板では「多摩川氾濫は天災ではなく人災だった」という書き込みが続出している。堤防建設反対派住民への非難の声があがっている。「週刊文春デジタル」では”反対派”とされている「二子玉川の環境と安全を考える会」にも話を聞いた。同会の代表を務めていた男性は昨年他界し、副代表の男性が取材に応じた。

「我々は堤防が要らないと主張していたわけではないんです。堤防ができる前、川沿いの土手には桜が咲き誇り、松林も生い茂っていたので、もちろんこの綺麗な景観を守りたいという気持ちがありました。そうした木々を避けて堤防を建設するといった国交省の柔軟な対応を求めていただけなんです。我々が一番に主張していたのは、中洲の樹木の伐採でした。例えるなら血管の中にコレステロールが溜まってしまっているような状態で、自然と水位は上がってしまいます。そうした点を含めて、国交省に対して安全と環境のバランスを保った堤防を作ってほしいと頼んでいました」(副代表の男性)

 同会は国交省と話し合いを重ねたが、計画は進んでいったという。やむなく2010年1月29日、同会は堤防建設差し止めを東京地裁に申し立てた。当時の新聞でもこんな見出しで報道されている。

《仮処分申請:多摩川の堤防工事、住民が差し止め求め――世田谷》毎日新聞2010年2月4日付
《堤防建設差し止め 住民ら仮処分申請》読売新聞2010年2月3日付

「結局、申し立ては棄却されてしまい、下流側の堤防は予定通り2010年におおむね出来上がりました。今回の冠水の原因となった上流側の氾濫箇所は、我々の運動が問題としている区間とは違う。我々は上流側の堤防には関与していないのです」(副代表の男性)

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最終更新:10/16(水) 11:54
文春オンライン

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