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川相昌弘、ドラフト4位の肖像#4――「早稲田実業との対戦は望むところだった」

10/17(木) 17:06配信

ベースボールチャンネル

早実には「負けてたまるかっていう気持ちがありました」

 岡山南は一回戦で北海道代表の北海と対戦した。

 四回表、四番の本間が初球を右翼のラッキーゾーンに本塁打を打ち、二点を先制した。しかし、川相が六回に二点を失い同点に追いつかれる。七回、岡山南は三番の横谷総一の適時打で一点を挙げ、これが決勝点となった。二年生の横谷は翌年、ドラフト外で阪神タイガースに入ることになる。

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 二回戦の相手は荒木大輔のいる早稲田実業だった。

 甲子園には時折、その世代の太陽のような選手が現れる。高校一年生の夏、甲子園に颯爽と現れた荒木はまさに燦々と輝く太陽だった。少年の面影を残した端正な顔つき、野球選手としては華奢な躯。そして早稲田実業という名門校のユニフォームが、彼をさらに魅力的に見せていた。

 早稲田実業との対戦は望むところだった。

「嬉しかったですね。荒木大輔の他、亡くなりましたけどキャプテンの小沢がいて、そして板倉もいました。有名なチームでしたし、対戦できるのは本当に嬉しかった。負けてたまるかっていう気持ちがありました」

 早稲田実業の小沢章一は荒木と共に一年生の夏から甲子園に出場していた好守の二塁手だった。早稲田大学に進んだが怪我により、野球を断念。二〇〇六年一月に肝臓癌で死去している。二年生の板倉賢司は翌年のドラフト三位で横浜大洋ホエールズに入った。

「何が何だかわからないうちに終わっていた」

 早稲田実業の眩さの前に岡山南は萎縮したのか、自滅する――。

 一回表、一死から内野安打。続く打者を投手ゴロに打ち取り、二塁で併殺のはずだった。ところが球を受けた遊撃手が落球。続く四番の板倉に安打を許し一点。五番打者にも安打を打たれて満塁となる。六番の荒木の三塁へのゴロを内野手が弾いて二点目が入った。川相は後続を打ち取ったが、五回にもエラー絡みで三点目を失った。〇対三の完封負けだった。


〈力を出せぬまま早実に寄り切られた岡山南の中で光ったのがエース・川相の力投。その川相、お立ち台でヒーローインタビューを受けていた早実・荒木を一べつして三塁側通路に引き揚げてくると、しばし無言。いかにも悔しいといった表情。

「今日は球も走っていたし、相手のヒットもいい当たりはなかった」「何が何だかわからないうちに終わっていた」…報道陣の質問にも感情を押し殺すようにポツリ、ポツリ。

「荒木君の投球にはうまみがあった。夏までにはスピードと変化球の切れをつけて、もう一度投げ合ってみたい」と、気の強いところをチラリ〉(『山陽新聞』一九八二年四月二日)


 川相は改めて荒木の投球をこう評する。

「無茶苦茶速い球っていうのじゃないんです。脱力するような感じから投げてきて、手元でボールがビュッと変化したりする。動くんです。だから、(スイングの)タイミングが遅れる感じがありましたね。畠山とかすごい速いピッチャーがいましたが、荒木はそうじゃない。ストライクゾーンの使い方が上手い。甲子園を知っているなと思いました」

 畠山とは池田の畠山準だ。川相や荒木と同じ年のこの速球投手はこの年のドラフトで南海ホークスから一位指名を受けることになる。

 ちなみに早稲田実業は次の準々決勝で横浜商業に一対三で敗れている。

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最終更新:10/17(木) 17:06
ベースボールチャンネル

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