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本屋大賞実行委員の書店員がオススメする「女の切実さを描いた」文庫3選

10/17(木) 6:00配信

Book Bang

 マリー・アントワネット。私、彼女のことなら結構詳しいです。あれは中学生の頃、麗しく気高い女近衛連隊長がベルサイユで活躍する人気漫画を読んでいた時のこと。自分の前世が二百数十年前のパリの町娘で、オーストリアからお輿入れしてきた美しい王太子妃に、憧れたりムカついたりしていたことを突然に思い出したんですよ。懐かしさのあまり、彼女についての本をいろいろ読んだり、映画を見たりしてきました。

 という話を人にすると、「この人大丈夫?」みたいな目で見られてしまうのですが、とにかく私はアントワネットさまウォッチャーの元パリジェンヌ(今は東京の書店員)なので、吉川トリコ氏の「マリー・アントワネットの日記 Rose/Bleu」を当然のように手にしました。悲劇の王妃なのにあまりにノリが軽すぎないか? と思いつつ読み始めたのですが、予想を超えて心にグサグサ刺さる日記でした。

 たった14歳でフランスの王太子に嫁ぐことになったマリー・アントワネットは、日記帳にマリアという名前をつけ、親友に心を打ち明けるように日々の出来事を綴ります。慣れないしきたりや、常に人目に晒されることに戸惑い苦しみ、夫とのうまくいかない関係や、なかなか生まれない跡継ぎに悩み、贅沢な装飾品や取り巻きとの遊びに散財し、ある男性との恋仲を噂され……。細かいエピソードも丁寧に描かれていて、史実にかなり忠実なのに、文体は炎上気味なギャルママのブログそのものです。ギャルだったことは一度もないのですが、気持ちわかるわ! と何度も心の中で叫び、友情と家族愛と恋心に、涙腺崩壊しました。そして、最後はなんだか勇気が出ちゃう素敵な日記でした。王妃さま。もし私が前世に戻れたなら、あなたを批判する人たちに「アントワネットさまはそんなに悪くないじゃん。ギロチンやりすぎ!」と大声で言ってやりたいです。革命下のパリでは、フルボッコにされちゃうでしょうけれど……。愛すべき悲劇の王妃に出会わせてくれた著者に、拍手を送りたいです。

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最終更新:10/17(木) 6:00
Book Bang

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