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2050年、50億人が食料と飲料水の危機に直面する、最新研究

10/18(金) 7:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

自然破壊の影響を地球規模でモデル化、300m四方単位で推定

 自然破壊のせいで、今後数十年間のうちに、世界で最大50億人もの人々が食料と水不足に直面する。特に影響が大きいのはアフリカと南アジアだ。また、沿岸部に暮らす何百万という人々が、激しい嵐のせいで危険にさらされる。そんな予測が、10月11日付けの学術誌「サイエンス」に掲載された論文「Global Modeling Of Nature’s Contributions To People(自然の恵みの全世界モデリング)」に発表された。

ギャラリー:世界「食」の風景 写真27点

「数十億人が2050年までに影響を被ると聞いてショックを受ける人がいなければいいのですが」と、論文の筆頭著者で米スタンフォード大学の景観生態学者レベッカ・チャップリン・クレイマー氏は語る。「ご存じの通り、私たちは多くの点で自然に依存しています」

 2019年5月に、全世界を対象とした生物多様性の評価報告書が初めて発表され、自然破壊が急激に進んでいることが明らかになった。国連の科学者組織である「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」が作成したその報告書「Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services(世界の生物多様性と生態系サービスに関する評価報告書)」によれば、人間の活動が原因で、100万種の動植物が絶滅の危機にあり、地球の陸地の75%以上、海洋の66%以上が著しく変化しているという。

飲料水の供給、海岸の保護、作物の受粉

 人類の幸福は自然の恵み、つまり、「生態系サービス」に左右される。今回発表されたモデルでは、飲料水の供給、海岸の保護、作物の受粉という3つの要素に着目した。

 チャップリン・クレイマー氏によれば、これらの生態系サービスが減少することで、より直接的に自然の恵みに依存しているアフリカと南アジアの人々が最も大きな打撃を受けることが判明したという。一方、豊かな国の人々は整ったインフラや食料輸入のおかげで、影響を和らげられる。

 飲料水の分析では、湖や川の近くで育つ植物を、モデルを使ってマッピングした。そのうえで、地形、気候、河川の流量などを考慮すれば、上流の農場から流れ出た窒素肥料がどれくらい水路に残るかを試算できる。この結果に飲料水の水源の地図を重ね合わせると、人体に有害な硝酸性窒素による汚染の可能性を推測できる。モデルの精度を検証するために、実際の汚染レベルを測定した別の研究結果を活用したとチャップリン・クレイマー氏は説明している。

 海岸の保護でも同様に、海岸の浸食や高潮から人々を守ってくれるサンゴ礁、マングローブ、海草、塩沼の地図と、人々が暮らす沿岸部の地図を重ねた。

 野生の花粉媒介者は自然生息地を必要とする。そこで、作物の受粉については、栽培地と現在の花粉媒介者の生息地を重ね合わせた。

 そうやって、3つの要素の社会的ニーズを地図に描き出してから、生態系サービスの現状を比較できるようにすると、人類の需要と自然からの供給のギャップがあらわになる。

 研究チームはそのうえで、2050年までの土地利用、気候、人口の推移という3つのシナリオを組み入れた。それぞれのシナリオは、社会、人口動態、経済の変化を盛り込んだ標準的なものだ。

 今回の研究は「自然を失うことで生じる社会的な負担についてのとても憂慮すべき未来」を描き出していると、メキシコ国立自治大学の生態学者パトリシア・バルバネラ氏は「サイエンス」の関連記事で述べている。「特に恐ろしい点は、今回のモデルが人類の幸福を左右する18の生態系サービスのうち、わずか3つしか検証していないことです」

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