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フィンランドで産んでみた!(孫フィーバー篇)|フィンランドで暮らしてみた

10/18(金) 6:05配信

幻冬舎plus

芹澤桂 (小説家)



フィンランドの秋の写真をお届けしました。

さて、ネウボラでの初診後、別機関での血液検査と尿検査、それから産院でのエコー検査を経て、ようやく妊娠が確定した。


エコー検査の検査台に乗る直前まで、「これで万が一妊娠してなかったら寿司食べに行ってやる」と心に決めていたのだけれど、モニターに見事ぴこぴこ動く胎児の影が映し出されたので、最近出てきたお腹が単なる肥満じゃなくてよかった、と胸をなでおろした。対して検査医の方はというと、エコー検査ばかり毎日しているだろうに「まあ綺麗な脳」「骨も完璧ね」と数センチしかない我が子を終始褒め続け、頭が下がる思いだった。
エコー検査が終わるとその2日後には封書が自宅に届き、出生前検査の結果、胎児に異常が見られなかったと書かれていた。そこでようやく、家族にも報告できる段階となった。

ちなみに今回の妊娠、私の親にとっては初孫となるけれど、夫の家族の方は義弟にすでに子供が二人もいるので義両親は慣れたもの、そんなに浮き足立ったりもしないだろうと思っていた。
それが大間違いだった。

「むらおんぷっらううにっさ」

 

ちょうどエコー検査の2週間後に実家に帰る予定を入れていたので、たまには外で食事を、と義両親をレストランのブランチに誘い出した。これは義父と義母に平等になるよう同じタイミングで報告できるように、という私たちの作戦だった。
田舎の素敵なレストランで私と夫はそわそわした気持ちを抑えつつ食事を終え、デザートが運ばれてくる前にお互い目配せした。

そして私はみんなに向かってと呪文のような言葉を唱える。Mulla on pulla uunissa.
ぷっら(pulla)というのは丸い甘いパン、もしくは菓子パン全般のことを指す。文章を訳すと、それが私のオーブンに入っていますよ、という意味になる。英語で言うところのBun in oven. パンがぷくぅと膨らんでいく様子が、まさに妊娠してお腹が膨らんでいくのを想定させるのでぴったりの表現だなぁと気に入っている。しかもフィンランドの場合は単なるパンじゃなく甘いパン。焼いているうちに家中に広がるバターやシナモン、カルダモンの香りが家族全体に幸せを運ぶ、そんなニュアンスがあって好きな表現のひとつだ。

日本語だと何になるんだろう。まさか「ヨメがコレで」っていう昭和的なやつ? それともオメデタだろうか。何かやんわりとオブラートに包んでいるようで、いかにも日本らしい。


さて、その呪文の言葉を聞いた夫の両親はというと、まずは義母が目を見開いて「おめでとう!」と私をハグしてくれた。長い長いハグ。挨拶のハグはたまにするけど、フィンランド人は、たぶんみんながアメリカのドラマを観てイメージしているほどはハグしないし、してもあっさりしている。義母にこんなに抱きしめられたのも入籍のとき以来だった。義父もにこにこと、「おめでとう」と嬉しそうにしていた。まだ子供の性別もわからないので、エコー検査のときにもらった写真を見ながら、どっちになるんだろうね、髪や目の色はどうなるんだろう、名前はどっちの国寄りのものに、なんてみんなで話して盛り上がった。楽しい、幸せな時間だった。

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最終更新:10/18(金) 11:05
幻冬舎plus

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