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中学受験、親の仕事は環境と生活を整え応援すること

10/18(金) 12:00配信

日経DUAL

近年注目されているのが、わが子に過剰な期待と負担をかけ、結果として子どもの心を傷付けてしまう、いわゆる「教育虐待」です。この連載では、子どもを思う、よい親だからこそしてしまう恐れのある「教育虐待」について、マンガを通して考えていきます。コーチングの専門家である菅原裕子さん(ハートフルコミュニケーション代表理事)の解説と併せてお読みください。

●エピソードvol.9 子を信じて任せるのは部下育てと同じ

 教育虐待が起こる原因の1つは、子どもに良い人生を送ってほしいという思いです。親の愛情からとはいえ、それで子どもが苦しんでいたり、将来弊害が出たら、それは虐待になってしまいます。そういった点で、子育てと職場の後輩育ては似ています。部下に良い仕事をさせてあげたい、成果を出させてあげたいと思い、よかれとやっていることが、ハラスメントになることもあるのです。

 子どもにしろ、職場の後輩にしろ、本人に任せ、親(上司)は応援に徹することが、上手な子育て(部下育て)の秘訣です。ここで気を付けたいのは、「応援」は、「褒める」とは違うこと。ひたすら褒められて伸びていく気質の子もわずかにはいますが、多くの子どもは、親がそばについて褒めて、褒めていると、褒め言葉が呪縛となり「もう、これ以上できない」と言えなくなってしまいます。そして、いよいよ「褒め(=親の期待)」を受け止めきれなくなると、「もう、親を喜ばせることはできない」という気持ちになり、家庭内で暴力を振るったり、不登校になったり、塾帰りに夜の街をさまよったりするようになるのです。

 それでは、「褒め」とは異なる「応援」とはどのようなことを指すのでしょうか。(菅原さん)

受験が可能な環境なら情報を与えるのがフェア。後は子に考えさせて

 受験を例に取って説明しましょう。経済的、地理的に受験が可能で、親も受験をさせてもいいかなと思う場合、小学校の3年生くらいまでに、「あなたには中学受験という選択肢があるよ」ということを伝えるのが、子どもにとってフェアなことです。その際には、地元の公立中学、わざわざ電車に乗っていく私立中学、それぞれのメリット・デメリットを伝えます。私立中に行く場合は、試験があり、そのために、塾に行って勉強をしなければならないことも伝え、本人に考える時間を与えます。マンガの家庭のように、実際の学校を見せるのも良い方法ですね。

 その結果、私立中に行きたいと本人が言い、その理由が親も納得することであれば、親は、受験勉強の態勢を整えましょう。塾や家庭教師、個別指導等、勉強をする環境づくりです。塾選びは非常に大切です。勉強漬けになり過ぎず、子どもの気質に合った塾を選びましょう。実際の勉強は塾に任せましょう。親が勉強の内容に関わると欲が出て、ヒートアップしてしまうからです。ただし、子どもが伸び伸びと、楽しんで勉強しているかは常にチェックしてあげてください。

 受験勉強を進める中で、子どもは困難にもぶつかります。時には目の前の課題から逃げだしたくなり、葛藤するときもあります。そのときに親が「宿題はやったのか?」と介入してくると、子どもは親にも対応しなければならず、自分の中の葛藤にじっくり立ち向かうことができなくなってしまいます。親は子どもが悩んでいるな、と思ったときも見て、待っていてあげてください。そして、子どもがやっと、動き始めたときに「あ、やっているね」と一声かけてあげるだけ、これだけでよいのです。

 待って、待って、それでも動き始めないことも時にはあります。それは、子どもの責任です。子どもの気質から、わが子はどこまでひとりでできるかを推測し、ひたすら待って、助けが必要なところで、初めて手を差し伸べる(分からないところを一緒に考えるなど)。それが、応援上手な親の子育て法です。ちなみに子育てでそれができたら、部下育ては楽勝ですよ。(菅原さん)

菅原裕子(すがはら ゆうこ)

NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事

(有)ワイズコミュニケーション代表取締役。人材開発コンサルタントとして企業の人材育成に携わる一方、その経験と自身の子育て経験から、子どもが自分らしく生きることを援助するためのプログラム<ハートフルコミュニケーション>を開発。『子どもの心のコーチング』(PHP文庫)、『コーチングの技術』(講談社現代新書)など著書多数。https://www.heartful-com.org/

取材・マンガ/オオスキトモコ

最終更新:10/18(金) 12:00
日経DUAL

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