ここから本文です

難病の娘を救いたい~元ラガーマンの父親は医学を一から学んだ

10/19(土) 13:50配信

クーリエ・ジャポン

娘が生まれたときから侵されている小児交互性片麻痺という難病の治療法が確立されていないと知ったとき、父親は自ら立ち上がることを決めた。元ラガーマンで科学の知識がまったくなかった彼だが、医学論文を読みあさることから始め……。

サイモン・フロストとニーナ・フロストの娘アナベルは生まれてからずっと、目のけいれんや、筋肉の収縮、痛み、一時的な麻痺といった発作を頻繁に起こしていた。だが原因がわからないまま、苦しい2年が過ぎた。

そしてやっと可能性の高い診断が得られた。小児交互性片麻痺(AHC)というきわめてまれな遺伝子疾患だった。フロスト夫妻は初め、病名がわかって喜んだが、すぐにその気持ちは消えていった。

人間の細胞にはナトリウム・カリウムポンプという構造があり、体にとって重要な働きをしている。ふたりが知ったのは、世界に900人ほどいる小児交互性片麻痺の子供の多くでは、このナトリウム・カリウムポンプのサブユニットを作る遺伝子の1つに変異があるため、体が神経細胞を繰り返し発火させる能力が阻害されていることだった。

さらにこの病気には有効な治療法や治療薬がないことや、アナベルの発作は、どれか1つだけで、脳への永久的な損傷や死につながる可能性があることも判明した。そしてもう1つわかったのが、この病気の情報を入手するのが難しいことだった。

小児交互性片麻痺患者の支援団体が推薦する、この病気の専門医はアメリカに4人しかいない。フロスト家に一番近くの医師は、多忙すぎてアナベルは診察してもらえなかった。別の医師は診察まで2ヵ月待ちだった。

小児交互性片麻痺のための基金自体も、患者の平均余命や、アナベルの病気がどのように進行するのかという、フロスト夫妻が最初に抱いた疑問についてあまり答えられなかった。小児交互性片麻痺を研究している科学者や臨床医が比較的少なく、しかもその中心は基礎研究であって、治療法の開発ではないらしい──ふたりはそう気付いた。

サイモン・フロストは、自分たちでどうにかするしかないように感じたと語る。不動産の投資と開発を仕事とする、元ラグビー選手のフロストには、科学の知識はゼロだった。

「それでも、アナベルやほかの小児交互性片麻痺の子供たちに何らかの治療法を届けるには、自分でやるしかないと感じたのです」

それから2年間、フロストは小児交互性片麻痺という難病の勉強に身を投じた。

フロストは現在、開発段階の遺伝子治療とその遺伝子の導入方法に関して、アメリカ特許と国際特許に出願中であり、発明者の一人として名を連ねている。また、娘のための新しい治療法につながる可能性のある研究の大部分を、プロジェクトマネージャーとして取りまとめており、臨床試験の実施を目指している。

1/3ページ

最終更新:10/19(土) 13:50
クーリエ・ジャポン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事