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“原発のドン”が現金ではなく「賄賂小判」を関電幹部に贈った理由

10/19(土) 9:01配信

FRIDAY

福井県高浜町を舞台に、「原発マネー」が関西電力の幹部らに還流していたことが明らかになった。そのキーマンであった高浜町の元助役・森山栄治氏(享年90)の自宅(写真)は、周囲の街並みから完全に浮くほどの大豪邸だ。

賄賂としてばら撒かれた小判ほか高浜原発にまつわる画像

「近所の住民で、普段から森山さんと接していた人はいませんでしたね。この町では雲の上の人ですから。それでも今年3月に亡くなった際、お葬式には出席しました。何百人も参列するわけでもなく、本当に普通の葬式でしたよ。今思えば、関電の人たちは、あれだけ多くの人がお世話になっていたはずなのに、葬式に花などは一切出していなかった。後ろめたかったんでしょうね」(近隣住民)

’87年に助役を退任した森山氏は、関西電力の子会社の顧問に就任する。その一方で、関電から原発関連業務を受注する地元の建設業者やメンテナンス会社の顧問や相談役も務め、億単位の手数料を提供されていた。そのカネが原資となり、森山氏は関電幹部らに「賄賂」として、小判や金貨、金杯など、現金も含めて約3億2000万円相当を渡していた。

本誌が高浜町を訪ねて町民たちの声を聞くと、誰しもが前代未聞の金品受領事件を複雑な気持ちで見守っていた。

古くから民宿を営む町民はこう明かす。

「昔は漁業の町で、夏になると海水浴のお客さんで賑わっとったんだが、それもだんだんさびれていった。でも、’74年に原発が稼働する前後から、多くの作業員の方が町に来るようになった。それは今も同じ。作業員の方が、地元の民宿に泊まるように働きかけてくれたのが、森山さんなんよ。こんな田舎なのに、町には民宿が100軒以上ある。私らは間違っても森山さんのことを悪く言えへん」

「原発通り」と呼ばれる町のメインストリートは、朝と夕方になると原発に向かうバスや小型乗用車などで混み合うのが、毎日の風景だ。町内を歩くと、役場をはじめ、体育館、図書館などの公共施設が目につく。どれも人口1万人ほどの自治体とは思えないほど立派で巨大なのだ。

高浜町の行政関係者が言う。

「僕らは子供の頃から、親や祖父に『この町に雇用とお金を持ってきたのは森山さん。町の施設は、森山さんのおかげ』って言われたものです。役場の職員は、森山さんの前では皆、直立不動でした」

関西電力と高浜町のパイプ役として、双方に絶大な影響力を持った森山氏。その地位を維持するための手段の一つとして、森山氏は現金だけでなく、小判(3枚)や金貨(365枚)、金杯(8セット)などを関電の幹部たちにバラ撒いていた。

それにしても小判とはいったいどんなものだったのか? 関西電力の広報担当者に聞くと、「昔の通貨としての小判ではなく、金を加工した小判だと確認しております」という。つまりレプリカである。

金工芸品を製造・販売している、貴金属メーカーの老舗『徳力本店』(東京・千代田区)の担当者はこう解説する。

「時代劇に出てくる小判がほしいという方は多くいらっしゃいます。通貨ではなく、工芸品としての小判は、金塊のように日々、価格が動くものではなく、投資用ではありません。皆さん、記念品、贈答用としてお買い求めにもなります。金をわざわざ小判の形に真似て加工するのは、やはり見て楽しむためですね。当店では小判を10g単位で販売しています。価格は10gで約14万円です。

報道によれば今回の関西電力の件で渡されたのは、1枚8万円の小判や1セット44万円分の金杯ですが、これは普通に販売されているもので、珍しいものではありません。私どももデパートなどにも卸しているので、そちらで購入できます。金貨のほうは扱っているところが多いので、比較的入手しやすいと思います」

森山氏の古くからの知人はこう言う。

「森山さんの唯一の趣味は将棋で、物事を理詰めで考える人でした。関電の幹部にゴールドを渡していたのも、計算ずくだと思います。あからさまに現金を渡せば拒否されるかもしれないが、昇進などのお祝い事に記念品だと言って小判や金貨を贈れば、先方も受け取りやすい。しかも、現金と同様の価値があることは一目瞭然ですからね」

森山氏の思惑通りに、関電幹部たちは断ることもなく小判や金貨、金杯を受け取り、皆、自宅に持ち帰っていた。

だが、10月2日の記者会見で関西電力の岩根茂樹社長は「(森山氏に)激高され、返却を諦めざるをえなかった」と、まるで被害者のような口ぶりで語った。

高浜町議の河島浩彦氏が言う。

「関西電力の会見によって、高浜町に対して物凄くマイナスなイメージがついてしまった。一方で関電が自分たちに責任がないようなスタンスで発言していることに関しては違和感を持っています」

10月9日になって関電の八木誠会長は辞任を発表し、岩根社長も辞意を表明した。だが、これは遅きに失した。

ジャーナリストの大谷昭宏氏が語る。

「関西電力は、森山氏から金品を受け取らざるをえなかったのは背景に人権問題があるからだ、と暗に言うことで世間を納得させようとした。巧妙で卑劣なやり方です。会長、社長は辞任するなら、最初に辞めて、調査には全面的に協力すると言えばよかった。金品の受け取りと原発事業はどう関係するのか、その肝心なことを隠蔽(いんぺい)するためにこのタイミングで辞めるだけです。今回の件で明らかになったのは、原発の役割はエネルギーの循環ではなく、原発マネーの循環だったということですよ」

会長、社長以下、関西電力の幹部が、原発マネーにまみれたゴールドを受け取っていた事実はあまりに重い。

『FRIDAY』2019年10月25日号より

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最終更新:11/15(金) 12:03
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