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【ヒットの法則28】カイエンはポルシェにとって「新しい形のスポーツカー」だった

10/19(土) 6:30配信

Webモーターマガジン

カイエン登場の背景にあるバイザッハ研究所の存在

2002年のパリ オート サロンでワールドプレミアされ、2003年春に日本デビューを果たしたポルシェ カイエン。その後、世界のポルシェ総販売台数の半分以上を占める稼ぎ頭に成長している。ポルシェにとって、カイエンとはどういうクルマだったのか。2005年春、カイエン ターボの試乗をとおして、こもだきよし氏が検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年5月号より)

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カイエンはポルシェの歴史の中でユニークな存在なのかというと、ボクは決してそんなことはないと思っている。ただポルシェブランドとしてSUVであるカイエンを製造したということがエポックなのである。つまりポルシェとして「形」はユニークだが、そこにはハイパフォーマンスなスポーツカーを創ろうという意図が明確に見えており、SUVといえどもスポーツカーメーカーであるポルシェらしいクルマに仕上がっていると思うからだ。

もうひとつ。ポルシェとして、というよりその傘下のバイザッハ研究所としてのクルマ創りのノウハウは、何もスポーツカーばかりではない。バイザッハ研究所には世界のカーメーカーから開発の依頼が数多く来ている。そこでさまざまなクルマの研究開発がなされているからだ。バイザッハ研究所がEクラスをチューニングして、メルセデス・ベンツが500Eとして販売したのは有名だ。もう少し古い話では、アウディ自慢のクワトロ4WDシステムもバイザッハ研究所が開発に関わったと言われている。

これらでもわかるように、ダイナミックな性能の研究開発では世界の最先端を行っているバイザッハ研究所は、何も背の低いスポーツカーばかり手がけているわけではないのだ。我々には知らせることなくバイザッハ研究所の手を経て発売されているクルマが多くあるということも否定できない。

カイエンの場合には、そのクライアントがポルシェ本社になっただけだ。もちろん並みのクルマを創るのではなく、究極のパフォーマンスを発揮するスポーツカーとしてのSUVに仕上げることが条件になった。

なぜこのようなSUVがポルシェに必要だったのかを追求していくと、それはポルシェという会社を21世紀にも末永く繁栄させるためのマーケティング上の手段であることに気付く。

ポルシェが生き延びるためにはアメリカ市場を無視することはできない。2ドアの高級スポーツカーを創り続けるだけでなく、もっと幅広い層にも訴えかけることができるクルマが望まれたのだろう。そのクルマはメインターゲットがアメリカ市場だとしても、ヨーロッパやアジアなど他の市場でもある程度の需要が期待できるものでなければならない。そのひとつの答えがカイエンというSUVなのである。

アメリカ市場を重視しなければならないという現実はポルシェに限ったことではない。例えば毎年莫大な利益を出しているトヨタだが、北米市場による販売がなければ、半分の利益を出すのも難しいかもしれない。レクサスブランドを成功させ、ドイツ高級車と肩を並べておいしい商売をしている。

ホンダはそれ以上だ。日本でのアコードの販売台数は月1000台を超える程度。しかしオハイオの工場で年間40万台もの北米向けアコードを生産しているのである。三菱はアメリカ市場での販売に失敗した。いま会社の建て直しが思うようにはかどらないのも、アメリカ市場を持ってないからだ。

このように、今や日本の自動車メーカーもアメリカ市場を無視した経営は成り立たなくなっているのである。でもポルシェにも、もうひとつの選択肢はあったはずだ。それはアメリカ市場に頼らない経営だ。細々と2ドアの純粋なスポーツカーを創り続け、理解してもらえる人にだけに買ってもらうという方法だ。

しかしMBAの資格を持った経営者がポルシェにいるとしたら、先の見通しが利かない細々とした活動より、販売台数と売上高を伸ばし、利益を大きくし出資者に配当を出すことを善とするだろう。そのためには大きなマーケットであるアメリカを優先した経営をしなければならない。

かつてのイギリスの自動車メーカーを例に出すまでもなく、繁栄していることにあぐらをかいていると衰退してしまうことは明らかだ。いくら良い味のクルマを作る技術があっても、会社に力がなければそれを生産に結びつけることができなくなる。そうした判断をポルシェの経営者がしたはずだ。

ポルシェが背の高いSUVに手を染めたというのは「なんでも創るぞ!」というポルシェからのメッセージだと感じたのはボクだけではないだろう。

ただしこれが4ドアの911やノッチバックセダンのポルシェだったら、カイエンほどのインパクトはなかったろう。背の低い2ドアスポーツカーとは正反対のクルマをポルシェが創ったから面白いのである。

でもカイエンを並みのSUVにするわけにはいかなかった。それは根幹であるスポーツカーのイメージを引きずり下ろしてしまう可能性があるからだ。あくまでもスポーツカーメーカーのポルシェでいなければ、生き延びてはいけないことを経営者は知っているのである。だからカイエンは安易に台数を増やすだけのクルマではない。

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最終更新:10/19(土) 6:30
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